【初心者向け】「現状維持バイアス」とは?誰でもわかる具体的な例を用いて解説

目次

1. 現状維持バイアスとは?

(1)現状維持バイアスの定義

現状維持バイアスとは、心理学や行動経済学において使用される言葉で、人々が現状の状況・選択肢を維持しようとする傾向をさします。具体的には、新しい選択肢が現れた場面でも、現状の選択肢を選び続ける行動パターンを指します。

例えば、具体的には以下のような状況で見られます。

状況解説
金融商品の選択利率が良いにも関わらず、銀行口座を移さない
携帯電話のプラン新しいプランが出ても、現行のプランを続ける

これらは一見合理的ではないかもしれませんが、人間は新しい選択肢を選ぶことに伴うリスクや手間を避け、安定した現状を選びがちです。これが現状維持バイアスの具体的な定義となります。

(2)心理学や行動経済学における位置づけ

「現状維持バイアス」は心理学や行動経済学における重要な概念です。心理学では、人間の思考や意志決定のパターンを説明するために使用されます。たとえば、人々が自分たちの行動を変えることに抵抗する理由や、新しい環境への適応が難しい理由を説明します。

また、行動経済学では、消費者の購買行動や市場での意思決定を研究する際に重宝します。市場参加者が理論的に最善の選択をしない理由や、なぜイノベーションに抵抗するのかなどを解明します。

現状維持バイアスは、両分野に共通する人間の行動傾向を反映した概念であり、それぞれの視点から多角的に理解することが重要です。

(3)「デフォルト効果」との違い

「現状維持バイアス」と「デフォルト効果」の2つの概念はよく比較されますが、意味は若干異なります。

「現状維持バイアス」は、現在の状態を維持する傾向や選択肢に対する偏りを指しています。具体的には、新たな選択肢が出てきたとしても、既存の選択肢を選び続けるという傾向です。

一方、「デフォルト効果」は、あらかじめ設定された選択肢(デフォルト)が選ばれやすいという現象を指します。例えば、ソフトウェアの設定や契約の際に、あらかじめチェックが入っているオプションをそのまま受け入れる傾向があります。

次の表で、これら二つの概念をさらに明確に理解できます。

概念説明
現状維持バイアス現在の状態を維持する傾向、既存の選択肢が選ばれやすい
デフォルト効果あらかじめ設定された選択肢(デフォルト)が選ばれやすい

どちらも人間の行動や選択に大きな影響を与えることから、マーケティングや商品開発の視点では重要な要素となります。

2. 現状維持バイアスが起こる原因

(1)損失や失敗を回避したい心理

現状維持バイアスが起こる大きな原因の一つは、「損失や失敗を回避したい」という心理です。人間は基本的にリスクを嫌う傾向にあり、新たな行動を取ることで何かを失うかもしれない、または失敗する可能性があると感じると、安全で確実な現状を維持しようとします。

例えば、投資の領域では、得る利益よりも損失を避けたいという心理が強く働きます。これは「損失回避バイアス」とも呼ばれ、投資家がリスクを取り過ぎないよう制約する役割も果たしています。

同様に、職場でも新しいプロジェクトや業務改善の提案があるとき、成功する可能性よりも失敗するリスクを重視して、現状維持の方向を選択することがあります。これも同じく現状維持バイアスの一種です。

このように、私たちは無意識のうちに失敗や損失を避けるために現状を選択し続け、新たな可能性から目を背けてしまうことがあります。この心理を理解することは、現状維持バイアスを克服するための第一歩と言えるでしょう。

(2)デフォルトから変更したいという欲求が弱い

「デフォルトから変更したいという欲求が弱い」とは、既定の選択肢や状況から脱却しようとする意欲が低い状態を指します。例えば、あるアンケート調査で「同意しない場合はチェックを入れてください」という形式が用いられると、多くの人はデフォルトの「同意する」状態を変えようとは思わないのです。

これは、新たな選択をするための情報収集や判断、行動が必要で、それらはエネルギーを必要とします。人間は効率的に行動を進めるために、「デフォルト」つまり「現状」を維持しようとする傾向が強く、「現状維持バイアス」を生み出します。

この理解は、自身の行動変容を促すだけでなく、マーケティングや社会課題へのアプローチでも役立ちます。例えば、商品のデフォルト設定を工夫することで、ユーザーの行動変容を促すことが可能になります。

(3)慣れ親しんだものを選ぶ傾向

「現状維持バイアス」が起こる原理の一つに、「慣れ親しんだものを選ぶ傾向」があります。これは、私たちが未知のものよりも既知のもの、新しいものよりも以前からあるものを優先的に選びがちという心理的傾向を指します。

例えば、スーパーマーケットで新しい商品と長年愛用している商品が並んでいるとき、どちらを選びますか?多くの人は慣れ親しんだ商品を手に取ることでしょう。一方、新しい商品は試してみたいと思いつつも、「もし味が合わなかったら…」というリスクを考えてしまい、結局は慣れ親しんだ商品を選んでしまうのです。

これが「現状維持バイアス」であり、「慣れ親しんだものを選ぶ傾向」そのものです。人間はリスクを避け、安全な選択をする生き物なのです。しかし、これが新しい挑戦や変化を阻む一因ともなります。

3. 現状維持バイアスの具体的な例

(1)日常生活での現状維持バイアス

現状維持バイアスは日常生活にも深く根ざしています。例えば、皆さんは新しい食事の場所を探すとき、よく行くお店を選びがちではありませんか?これは新しいお店で失敗することを避け、慣れ親しんだお店で満足できることを望む、現状維持バイアスの一例です。

また、スマートフォンの設定を変えることなく、初期設定をそのまま使っている人も多いでしょう。この場合の現状維持バイアスは、「デフォルト効果」とも関連しています。

さらに、毎日通る道を変えるのを避ける行動も現状維持バイアスです。新たな経路を試すことによるリスクを避け、馴染みのある道を選び続ける傾向が見られます。

これらの行動は全て、現状維持バイアスが私たちの日常に影響を与えている具体的な例です。

(2)ビジネス領域での現状維持バイアス

ビジネス領域でも現状維持バイアスは頻繁に見受けられます。既存のビジネスモデルや業務プロセスを変えることに抵抗感を覚える企業は多いです。例えば、新しいITシステムの導入が提案されたとしましょう。しかし、慣れ親しんだ現行システムからの移行を避ける傾向があります。これは、新システムへの移行に伴うリスクやコストが見えづらい中で、現状の運用が最善と判断する現状維持バイアスの表れです。

下記に現状維持バイアスが起きやすい状況を表形式で示しました。

状況現状維持バイアスの例
新しいITシステムの導入既存のシステムに留まる
新市場への進出既存市場のみでビジネス展開
新製品の開発既存製品の改良や更新に集中

ビジネス領域における現状維持バイアスを理解し、適切に対処することで、企業の成長や変革を可能にするのです。

(3)新商品を受け入れられない理由

新商品が市場に出ると、消費者はその製品を購入するかどうかを判断します。しかし、ここで「現状維持バイアス」が働くことがあります。

例えば、あるスマートフォンの新型が発売されたとします。新型は性能が良く、使い勝手も向上しています。しかし、これまで使っていた旧型もまだ十分に機能しており、新型がどれほど優れていると言われても、消費者は旧型を手放せず新型を購入しないことがあります。

新型スマートフォン旧型スマートフォン
性能
使い勝手
価格

上記の表のように、明らかに新型の方が優れているにも関わらず、現状(旧型スマートフォン)を維持したいというバイアスが働き、「慣れ親しんだものを選ぶ」傾向が強くなるのです。これが新商品を受け入れられない一因となります。

(4)転職できない理由

転職においても現状維持バイアスは見られます。現状の仕事に不満があるにも関わらず、転職という変化に躊躇する人が多いのです。

転職を考える時、以下のような心理が働きます。

現在の職場転職先
長所・短所は把握済み長所・短所は未知
人間関係が既に形成されている新たな人間関係を築く必要あり
常識・ルールが理解済み常識・ルールを覚えなければならない

これらは、未知の部分に対する恐怖や新たな挑戦に対する億劫さが現状維持バイアスを引き起こします。最終的には「今のままでもまあいいか」と思ってしまい、行動を起こさないという結果につながります。

このように、現状維持バイアスは私たちの転職活動をも制約してしまうのです。

4. 現状維持バイアスを克服する方法

(1)現状維持バイアスを認識する

「現状維持バイアス」とは、現在の選択や状態を続ける傾向があることを指します。その存在を認識することは、このバイアスを克服する第一歩です。具体的には、自分が何を選ぶか、何をするかの判断が、本当に最良の選択なのか、それとも「現状維持バイアス」によるものなのかを意識的に問いかけることが必要です。

例えば、昼食にいつも同じメニューを選ぶ理由は何でしょうか?新しいメニューが悪いと確信しているのではなく、「現状維持バイアス」が働いている可能性があります。同様に、自分の意見を変えない、新しい挑戦をしない、などの行動も「現状維持バイアス」の表れかもしれません。

このバイアスに気付くことで、自分が適切な選択をしているのか、それともバイアスによって制約されているのかを見極めることができます。そして、より良い選択をするための道筋が見えてくるでしょう。

(2)数字やデータで客観視する

現状維持バイアスを克服するためには、まず自身が行っている決定が本当に最善の選択なのかを、数字やデータによって客観的に評価することが大切です。たとえば、毎日同じ道を通って通勤している場合、他のルートに変更することに抵抗があるかもしれません。しかし、他のルートの所要時間や混雑状況などを調べて比較すると、現状のルートが最も効率的であるかどうかを確認することができます。

下記の表を作成してみてください。

ルート所要時間混雑状況
現状のルート30分混雑
ルートA25分混雑
ルートB35分空いている

このように具体的なデータを基に比較することで、現状から変更することのメリット・デメリットが明確になります。それが現状維持バイアスを克服する一歩となります。

(3)メリットとデメリットを書き出して客観視する

現状維持バイアスを克服する方法の一つは、選択肢のメリットとデメリットを具体的に書き出し、それを客観的に評価することです。

例えば、あなたが新たなプロジェクトに参加することを検討しているとしましょう。しかし、現在の仕事にも満足しており、いつも通りの作業を続けることで安定した成果を上げているため、新たなプロジェクトへの参加を躊躇している場合があります。

このような状況では、新プロジェクトの参加によるメリットとデメリット、現状維持のメリットとデメリットをリストアップします。以下に一例を示します。

メリットデメリット
新プロジェクト参加新たな経験が得られる労力と時間が増える
現状維持安定した成果がある成長の機会が見込めない

この表を作成し、それぞれの項目に重みをつけて評価します。これにより、選択肢の客観的な比較が可能となり、現状維持バイアスを克服する一助となります。

(4)少しずつ変化させる

現状維持バイアスを克服するには、自身の行動や環境を一気に変化させるのではなく、少しずつ変化させることが有効です。

たとえば、普段の食生活を見直す場合、急に全ての食事をヘルシーに切り替えるとストレスが溜まり、すぐに元の食生活に戻ってしまうことがあります。しかし、まずは朝食だけ健康的なものにするといったように、少しずつ変化させていくと継続しやすいです。

また、新たな技術を取り入れる際も、一度に全ての機能を使いこなそうとすると戸惑ってしまうことが多いです。そこで、1つや2つの機能から試すようにすると、少しずつ新しい技術に馴染むことができます。

以下の表は、これらの例をまとめたものです。

変化の対象現状少しずつの変化
食生活不健康な食事朝食だけ健康的な食事にする
技術の導入新しい技術に戸惑う1つや2つの機能から試す

これらの方法を通じて、現状維持バイアスを克服し、新たな可能性にチャレンジしてみましょう。

(5)現状を維持することが失敗と考える

現状維持バイアスを克服する手段の1つとして、「現状を維持することが失敗と考える」という視点の転換が効果的です。人間は本来、失敗を避ける傾向が強いため、自身の行動や態度を変えることへの抵抗感が生まれがちです。しかし、現状を維持したままでは新しい価値観や経験が得られないことを理解し、現状維持が失敗につながると捉えてみることで、一歩踏み出す勇気を得られます。

具体的には、以下のように考えてみてください。

表1. 現状維持と変化に対する認識のシフト

現状維持(バイアス)変化(行動)
安全であると感じる新しい挑戦と見なす
失敗を避ける学びと成長のチャンス

常に現状を見直し、新たな視点を取り入れることは、個人だけでなく組織にとっても大切なスキルです。必ずしもすべてが成功するわけではありませんが、失敗から学び、改善を続けることで、バイアスを克服し、より良い選択が可能になるでしょう。

5. 現状維持バイアスとマーケティングの関係

(1)サブスクリプションサービスの試用期間と現状維持バイアス

サブスクリプションサービスでは、試用期間が終了後もそのまま継続することが多いですよね。これは「現状維持バイアス」の影響を受けています。

現状維持バイアスとは、現状の選択肢を続ける傾向のことを指します。試用期間中にサービスを利用し始めたユーザーは、サービスの終了を自分で手続きしなければならない場合、面倒くささやここで新たな行動を起こすリスクを避けたいという心理から、そのままサービスを続けてしまいます。

具体的には、以下のような状況が考えられます。

期間終了時の選択肢継続する確率
手動で更新低い
自動で更新高い

この表からも分かる通り、自動更新設定になっていると、現状維持バイアスの影響で利用継続の確率が高まることが伺えます。

(2)メルマガの配信許可と現状維持バイアス

現状維持バイアスは、メールマガジンの配信許可のプロセスにも見受けられます。例えば、あるサービスに登録する際、メールマガジンの配信許可はデフォルトでオンになっていることが多いです。これは、現状維持バイアスが働くことを利用した結果で、ユーザーは許可を取り消す手間を避けるため、そのまま許可することが多くなります。

また、既にメールマガジンを受け取っているユーザーも、解除する手間を避けて受け取り続ける傾向があります。これも現状維持バイアスの一例です。

状況現状維持バイアスの働き
メールマガジン配信許可のデフォルト設定許可を取り消す手間を避け、そのまま許可する
既にメールマガジンを受け取っている解除する手間を避け、受け取り続ける

以上のように、現状維持バイアスはメールマガジンの配信許可でも顕著に現れています。

(3)おすすめプランの自動選択と現状維持バイアス

おすすめプランの自動選択は、事業者から見れば利益を最大化する手法と言えます。消費者は様々なプランから選択する際に、現状維持バイアスにより、自動的に選ばれたプラン(デフォルト)を変更しない傾向があります。

例えば、通信会社の携帯プランやインターネットサービスプロバイダ(ISP)のプラン選択などで確認できます。選択肢が多く、比較に時間がかかるほど、消費者は自動選択されたプランをそのまま受け入れることが多いです。

事業者はこの現状維持バイアスを活用し、意図的に特定のプランをデフォルト設定にすることで、利益を最大化しています。

6. まとめ

以上の内容から、「現状維持バイアス」とは、何も変化を加えないことを選択する傾向のことを指すと理解できます。心理学や行動経済学の領域でよく取り扱われ、一般的な生活やビジネスの場面でもよく見受けられます。

原因は、損失や失敗を恐れる心理、変化する欲求が弱いこと、既知のものを好む傾向などがあります。現状維持バイアスは、私たちが新しい商品を受け入れられない理由や転職できない理由とも関連しています。

このバイアスを克服するためには、まず自身の現状維持バイアスを自覚すること、事実やデータに基づいて客観的に観察すること、メリットとデメリットを比較すること、少しずつ変化を加えること、そして現状維持こそが失敗であると認識することが重要です。

さらに、マーケティングの観点からも現状維持バイアスは重要な要素です。サブスクリプションサービスの試用期間やメルマガの配信許可など、消費者の現状維持バイアスをうまく利用することで、効果的なマーケティング戦略を構築することが可能となります。

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この記事を書いた人

自己啓発本やビジネス書など、年間100冊以上を読む運営者が古今東西の自己啓発をおまとめ。明日の自分がちょっと楽しみになるメディアを目指しています。

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