1.モチベーションとは何か?
(1)モチベーションの定義
モチベーションは、心理学の用語で「動機づけ」や「意欲」を意味します。人が行動を起こす動機や理由、その行動を続けるためのエネルギー源ともいえるものです。モチベーションの高さは、個々の行動の質や量、目標達成度合いに大きな影響を与えます。
また、モチベーションは大きく分けて二つの種類があります。一つは「内発的モチベーション」で、自己実現や好奇心など、個人の内部から湧き出る自発的な動機づけを指します。もう一つは「外発的モチベーション」で、報酬や評価など、外部から与えられる刺激による動機づけを示します。これらは人それぞれの行動の背後にある力となり、日常生活からビジネスまでさまざまな場面で重要となります。
(2)モチベーションの種類とそれぞれの特徴
モチベーションには主に二つの種類が存在します:「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」です。
「内発的モチベーション」は自己達成感や興奮など、個人の内面から湧き出る動力です。自分自身の興味や喜びを追求することが主たる動機となります。例えば、趣味や自己啓発のため学んだり、挑戦したりする行為がこれに該当します。
一方、「外発的モチベーション」は報酬や罰、評価など、外部からの刺激により引き起こされる動力です。他人からの評価や賞賛を得ること、物質的な報酬を得ることが主たる動機となります。
以下の表で両者を比較してみましょう。
内発的モチベーション | 外発的モチベーション | |
---|---|---|
定義 | 個人の内面から湧き出る動力 | 外部からの刺激により引き起こされる動力 |
主たる動機 | 自己達成感や興奮 | 報酬や罰、評価 |
例 | 趣味、自己啓発 | 賞賛を得る、報酬を得る |
これらを理解することで、自分自身のモチベーションの源を見つけ、その上げ方を学ぶことが可能となります。
2.モチベーションが上がらない原因と解決策
(1)目標が不明確であること
モチベーションが上がらない一つの大きな理由として「目標が不明確であること」が挙げられます。
まず、目標が明確でないと、その達成に向けた行動計画が立てられず、行動に移すモチベーションが生まれません。具体的な目標を設定することは、それに向かって進むためのエネルギー源となります。「健康的な体を手に入れる」、「プロジェクトを成功させる」等、目標は具体的かつ達成可能なものであるべきです。
また、目標の不明確さは、達成感や充実感を感じにくくします。自分が何を達成したいのか分からないまま活動していると、何が達成できたのか、どれだけ進んだのかが明確にならず、モチベーションの維持が困難になります。
したがって、自分の目標を明確に設定することは非常に重要です。具体的な期限や達成目標を設け、それに向けた行動計画を作成しましょう。これがモチベーションを上げる一つの大きな手掛かりとなります。
(2)目標設定が高すぎること
高い目標設定は、達成した時の充実感を引き立てますが、それが挫折に繋がる原因となることもあります。目標が遥かに高すぎると、なかなか進歩が見られないことからモチベーションが下がり、結果として行動を起こしにくくなります。
具体的な解決策としては、「スモールステップ」の考え方が挙げられます。大きな目標を小さな段階的な目標に分割し、それぞれを達成することで成功体験を積み重ね、モチベーションを維持するという方法です。
例えば、「毎日2時間英語の勉強」が困難であれば、「毎日15分の英語の勉強」を目標に設定し、それを実行することで達成感を得て自身を励ますことが可能です。以下の表はその例を示しています。
元の目標 | スモールステップ |
---|---|
毎日2時間英語の勉強 | 毎日15分の英語の勉強 |
このように、現実的で達成可能な目標設定が、モチベーションを持続的に上げる一つの手法となります。
(3)興味がないことをやっている状況
興味がないことを強いられる状況が、モチベーションの大きな阻害要素となり得ます。例えば、仕事であれば自分の専門ではない業務を任されたり、学生であれば得意ではない科目を勉強しなくてはならない状況など、多くの人が経験しているでしょう。
表1: 興味がないことをやらなければならない状況とモチベーション
状況 | モチベーションの影響 |
---|---|
自分の専門外の業務 | 自信を失い、行動力が下がる |
得意でない科目の勉強 | 消極的な姿勢になり、効率が悪くなる |
このような状況下でモチベーションを上げるためには、まず「肯定的な視点」を持つことが重要です。それが自身のスキルアップにつながる、新しい視点を得られるといったプラス面を見つけてみましょう。そして、可能であれば自分の興味と関連付けることで、楽しみながら取り組むことができます。より具体的な手法については次章で詳しく解説します。
(4)評価が不透明で感じる疲労
モチベーションを下げる一因として、”評価が不透明で感じる疲労”が挙げられます。仕事や学習の成果が適切に評価されないと、私たちはその活動に対する意欲を保つことが難しくなります。
具体的には、成果が見えにくいタスクを続けていくと、結果を評価する基準が曖昧になり、どの程度頑張れば良いのか判断できなくなります。これは肉体的な疲労だけでなく、精神的な疲労も生じ、最終的にはモチベーションの低下につながります。
一方で、適切なフィードバックと明確な評価基準がある場合、私たちは自己成就感を得やすく、モチベーションを維持しやすくなります。つまり、透明な評価システムは、私たちのモチベーションを保つ上で重要な要素となるのです。
3.モチベーションを上げる具体的な方法
(1)明確な目標設定
目標設定はモチベーションを上げる最初の一歩です。頭の中にある漠然とした希望や夢を具体的な目標に落とし込むことで、達成のための行動を想像しやすくなります。
具体的な目標を設定する際には、「SMART」原則を念頭に置くと良いでしょう。SMARTとは、「Specific(具体的)」、「Measurable(測定可能)」、「Achievable(達成可能)」、「Relevant(関連性)」、「Time-bound(時間制限)」の頭文字をとったものです。
例えば、「もっとスキルアップしたい」ではなく、「3ヶ月後にはExcelのスキルテストで70点以上を取る」という具体的な目標を設定します。これにより、日々の学習や練習が明確な目標に向かって進んでいることを実感し、モチベーションを維持しやすくなります。
(2)小さな成功体験の積み重ね
モチベーションを上げるための重要な手段として、「小さな成功体験の積み重ね」があります。一見些細な成功でも、それを積み重ねることで自信を生み、次への意欲を引き立たせます。
例えば、語学学習を考えてみましょう。初めて一文を英語で完全に理解できた日、初めてネイティブと短い会話ができた日。これらは小さな成功体験ですが、確実に語学力が成長している実感を得ることができます。
以下にその具体的な手順を示します。
- 目標を細分化する:大きな目標を達成するための小さなステップを設定しましょう。
- 小さな成功体験を記録する:達成したことを明確に意識するために、記録しておきましょう。
- 成功体験を振り返る:達成したことを振り返り、自己肯定感を高めましょう。
このように小さな成功体験を積み重ねることで、モチベーションは確実に上がります。
(3)興味のある領域への挑戦
興味のある領域へ挑戦することは、モチベーションを上げる有効な手段です。自分が関心を持つ分野を深めることで、その活動自体が楽しみとなり、積極的に取り組む動機付けとなります。
例えば、新しい趣味を始めたり、学びたいと思っていた分野のオンラインコースに参加したりします。また、現在の仕事の中にも、新たなスキルを学ぶ機会や挑戦する要素を見つけられるかもしれません。
以下の表は、興味が向く分野への挑戦とモチベーションの関係を示しています。
興味のある分野への挑戦 | モチベーションの向上 |
---|---|
新しい趣味の開始 | 自己実現感と達成感でモチベーションUP |
学びたい分野のオンラインコース参加 | 学習意欲の向上でモチベーションUP |
仕事で新たなスキル習得 | 成長感を感じ、モチベーションUP |
興味のある領域への挑戦は、自己成長の契機となり、モチベーションを持続的に維持するための重要な要素です。
(4)自分の強みを活かす作業
自分の強みを活かすことは、モチベーションを上げる有効な手段です。それは、自分の得意なことを行うことで自信がつき、それがモチベーションの向上につながるからです。
まず、自分の強みを明確にするために、以下のような自己分析を試みてみましょう。
1. 過去に成功した経験を振り返る 2. 他人から評価されることが多いスキルや特性は何か 3. 自分が他人と比べて優れていると思う点は何か
次に、その強みを活かして作業ができる環境を整えます。具体的な職務において強みをどのように活かせるか、または強みを活かすために新たな挑戦が可能か、自分自身で計画を立ててみましょう。
強みを活かした作業は、成果を出しやすく、その結果として自己効力感が向上します。これがさらなるモチベーション向上につながるのです。
(5)学ぶ機会の創出
モチベーションを上げるためには、新しい知識や経験を得る機会を積極的に創出することが有効です。学びの場は自己成長を促し、それが結果としてやる気の向上につながります。
具体的には、あなたが興味を持ったテーマに対するセミナーやワークショップに参加する、専門書を読む、オンラインコースを受講するなどが考えられます。
また、学ぶ内容については新規性だけでなく、既存の知識やスキルの深化も重要です。表1に示すように、自分の強みや興味に対して深掘りすることで、それらがより有効に活用できるようになり、自信とモチベーションが向上します。
【表1】学ぶべき内容の例
分野 | 具体的な学びの内容 |
---|---|
自分の強み | 専門性向上、知識のアップデート |
興味のある領域 | 新しい技術や理論の学び |
継続的な学びは、新たな視点を提供し、自己成長を促進します。これがモチベーション維持に大きく寄与します。
(6)周りの人々との良好なコミュニケーション
モチベーションを上げる方法の一つとして、周りの人々との良好なコミュニケーションが挙げられます。コミュニケーション能力は、一人では達成できない目標に向かって、他者と協力しながら効果的に進めていく為のキーファクターです。
具体的な行動例としては、まずは自分の意見や感情を適切に表現すること。これにより自分の考えを他者に理解してもらい、共感を得ることができます。次に、他者の意見に対するリスペクトと理解を示すこと。これにより相手からの信頼を獲得し、良好な関係性を築くことができます。
また、具体的なアイディアや提案の交換により、新たな視点や知識を得られる機会も増えます。これら全てが一緒に働くことで、モチベーションの維持や向上に大いに貢献します。
4.モチベーションに関する有名な理論
(1)マズローの欲求5段階説
マズローの欲求5段階説とは、心理学者アブラハム・マズローが提唱した、人間の欲求を5つの段階に分けた理論です。これはモチベーションの源泉を探る上で重要なツールとなります。
マズローの欲求5段階説によれば、人間の欲求は以下のように分類されます:
1.生理的欲求:飲食や睡眠など、生物として生きていくための基本的な欲求 2.安全性の欲求:身体的、経済的な安全、秩序や法則への信頼など 3.愛情・所属の欲求:友情、愛情、集団への所属などの社会的な欲求 4.尊重の欲求:自尊心、他者からの尊重、成功・評価への欲求 5.自己実現の欲求:自己の可能性を最大限に発揮する欲求
これらの欲求は下から順に満たされていくことで、次の段階の欲求が出てきます。それぞれがモチベーションに大きな影響を与えます。
(2)マクレランドの欲求理論
マクレランドの欲求理論は、人間のモチベーションを理解するのに役立つ有名な理論の一つです。この理論によると、人間の動機づけは主に「成果欲求」「権力欲求」「所属欲求」の3つに分類されます。
「成果欲求」は目標達成や課題解決に喜びを感じる欲求を指し、「権力欲求」は他人を影響させ、コントロールしたいという欲求を、「所属欲求」は人々との良好な関係を保ちたいという欲求をそれぞれ表しています。
これら3つの欲求は、個々人の性格や経験によって、その強さが異なります。モチベーションを上げるためには、自分自身がどの欲求により動かされやすいかを理解し、それに合わせて行動することが重要とされています。
(3)ハーズバーグの二要因理論
モチベーション理論の一つに、心理学者フレデリック・ハーズバーグの提唱した「二要因理論」があります。ハーズバーグは、人の働く意欲を「衛生要因」と「動機付け要因」の2つに分けました。
衛生要因は、給与や職場環境など、不満があるとモチベーションが下がるが、満足していても特にモチベーションが上がるわけではない要素を指します。
一方、動機付け要因は、仕事の成果に対する認識や自己成長の機会といった、満足感があるとモチベーションが上がる要素です。
つまり、モチベーションを上げるためには、「衛生要因」を最低限確保しつつ、「動機付け要因」を高めることが重要となるのです。
5.モチベーションを上げ続ける秘訣
(1)自分自身のモチベーションのパターンを理解する
モチベーションを上げるための第一歩は、自分自身のモチベーションのパターンを理解することです。それにより、何が自分を動かし、何が自分を停滞させるのかを知ることができます。自分自身のモチベーションのパターンを見つける一つの方法は、日々の行動や感情を記録し振り返ることです。例えば、下記のような表を作り、1週間〜1ヶ月ほどデータを集めてみましょう。
日付 | やる気が出たこと | やる気が落ちたこと |
---|---|---|
1/1 | 早起きをした | 長時間の会議 |
1/2 | 新しい案件を獲得 | 遅くまで残業 |
1/3 | チームとランチ | 未解決の問題 |
表を見返すことで、自分にとってやる気を感じさせる要素や、逆にやる気が落ちる要素が見えてきます。これを利用することで、自分なりのモチベーションアップ法を見つけることができるでしょう。
(2)具体的な行動計画の立案
モチベーションを上げるための重要な要素の一つが、「具体的な行動計画」です。なぜなら、抽象的な目標よりは、具体的な行動計画を立てることで、具体的な行動をとることが可能となりやり遂げた感を感じやすくなります。
具体的な行動計画を立てるためには、以下のステップを試してみてください。
- 目標を明確にする:何を達成したいのか具体的に明示しましょう。
- 目標までの過程を分割する:大きな目標を小さなステップに分け、それぞれのステップで何を達成すれば良いのか明確にします。
- 期限を設定する:各ステップを達成するための期限を設定し、勝ち組の感覚を得るために定期的に振り返ります。
このように具体的な行動計画を立てることで、進行状況をはっきりと確認しやすくなるだけでなく、目標達成への自信とモチベーションの維持にも繋がります。
(3)継続的な振り返りと改善
継続的な振り返りと改善は、モチベーションを上げ続ける重要な要素です。まず、目標に対する進行具合を定期的に確認しましょう。これには、一日の終わりや一週間の終わりなど、決まったタイミングで行うことが有効です。
例えば、以下のような自己評価表を用意するのも良いでしょう。
期間 | 達成目標 | 実績 | 振り返り | 改善策 |
---|---|---|---|---|
1週間 | ◯◯を達成する | ◯件 | 予定通り進んだ理由/進まなかった理由を評価 | 次週の進め方を記載 |
これを通じて、自分自身の振る舞いや結果について深く理解し、必要な改善部分を見つけ出すことができます。そして、その改善策を具体的に行い、次の週に生かすことで、一貫してモチベーションを上げることが可能となります。
6.まとめ:モチベーションを一貫して上げるためには
モチベーションを一貫して上げるためには、自身でコントロールできる要素に焦点を当てることが重要です。まず、自分自身のモチベーションのパターンを理解し、それに合わせた明確な目標を設定することが必要です。また、その目標達成のための具体的な行動計画を立て、それに沿って行動を始めます。
そして、達成感や成長感を感じるためには、行動計画を一つ一つクリアしていくことが大切です。毎日、週、月に一回の振り返りを行い、自分の進歩を評価し、改善点を見つけ出すことも重要です。
モチベーションの持続は、持続的な努力と自己調整によって可能になります。興味のある分野を追求し、自己評価を行いながら、自分自身の強みを発揮できる環境を作り上げることが大切です。これらのことを心がければ、モチベーションは自然と続いていきます。