1.はじめに: 「仕事の価値観」って何?
私たちは毎日仕事に励みますが、その背後にある「仕事の価値観」について深く考えたことはありますか?「報酬がいい」「プライベートも大切にしたい」「社会貢献がしたい」など、仕事に対する考え方や優先順位を示すこれらの価値観は、我々の働き方やキャリア選択に大きな影響を与えます。
実は、仕事に対する価値観は一人ひとり異なり、その違いが職場環境や人間関係、仕事の進め方に反映されます。そのため、自分自身や他者の「仕事の価値観」を理解することは、より良い職業生活を送るための重要なステップとなります。
本記事では「仕事の価値観」について詳しく解説し、それがどのように自身の人生に影響を与えるのか、またその見直し方についてもご紹介します。
2.仕事に対する価値観の重要性
(1)自分の仕事への向き合い方を明確にする
価値観は、自分が何を重視し、どのように行動するべきかを示すものです。「仕事への価値観」を明確にするとは、具体的には、自分が仕事に何を求め、どのような姿勢で取り組むべきかを理解することを意味します。
まずは、自分がひとつのタスクを遂行する際の考え方や行動パターンを見つめてみましょう。それは、チームワークを重視しますか?それとも、自分自身のスキルや知識を最大限に活かすことを優先しますか?また、仕事で成功を収めるためには何が必要だと考えていますか?例えば、1に自分の仕事への向き合い方を分析するを示します。
【1:仕事への向き合い方を分析する】
- チームワークの重視度
- スキル・知識活用の重視度
- 成功への必要要素
以上のように、自分の仕事への向き合い方を明確にするためには、自問自答を繰り返し、自己理解を深めることが重要です。これが、仕事の価値観を形成する第一歩となります。
(2)長期的な職業生活の計画を立てる手助けになる
仕事の価値観は、長期的な職業生活の計画を立てる際の大きな指針となります。仕事への思い入れや関心、あるいは自己実現をどういった形で見つけたいかという観点から、自分のキャリアパスを見直すことが可能です。
例えば、価値観が「人の役に立つこと」であれば、医療や教育などの人助けを目的とした業界を目指すことが考えられます。一方で、「創造性を発揮すること」を大切にするなら、デザインやプログラミングなどのクリエイティブな仕事が適しているでしょう。
次に表1をご覧ください。
表 1. 仕事の価値観とキャリアパスの例
価値観 | キャリアパス |
---|---|
人の役に立つこと | 医療、教育、ソーシャルワーク |
創造性を発揮すること | デザイン、プログラミング、製品開発 |
このように、あなたの仕事の価値観を明確にすることで、今後の職業生活を計画する際の方向性を見つけやすくなります。
(3)仕事のやりがいやモチベーションを見つける
「仕事の価値観」は、私たちが仕事に求める満足感やモチベーションの源を見つける上でも重要な要素です。
例えば、ある人は「成果を出すこと」が価値観としてあり、目標を達成した時の達成感や、自分の努力が形になった時の喜びをやりがいと感じるでしょう。また、他の人は「人の役に立つこと」を大切にし、他人が自分のおかげで困難を乗り越える姿を見ることで喜びを感じるかもしれません。
以下の表に、一般的な価値観と、それに基づくやりがいやモチベーションの例を示します。
価値観 | やりがいやモチベーション |
---|---|
成果を出すこと | 自己の成長や達成感を感じる |
人の役に立つこと | 他人が喜ぶ姿に喜びを感じる |
チームで働くこと | チームでの成功や一体感を楽しむ |
このように、自身の価値観を理解することで、自分が何をもとめ、何に喜びを感じるのかが明らかになり、毎日の仕事がより充実したものとなります。
3.仕事の価値観とは何か:基本的な要素
(1)自分がどういう姿勢で働くか
仕事の価値観とは、自分がどういう姿勢で働くか、という視点からも考えられます。これは、自分自身の仕事への取り組み方や態度を表しています。例えば、以下のような観点から自分の働き方を見直してみてください。
- 努力:あなたは仕事にどれくらい力を入れて取り組んでいますか?
- チームワーク:あなたは協調性を重視し、チームでの作業を好みますか?
- 自己成長:あなたは自分自身の成長のために、新しいスキルや知識を学ぶことを重視しますか?
- 挑戦:あなたはリスクを取って新しいことに挑戦することを好みますか?
これらの問いかけは、自分がどういう姿勢で働くべきか、または働きたいかを明らかにする一助となります。それが、あなた個人の「仕事の価値観」を形成する一部となるのです。
(2)何のために働くのか
仕事の価値観を考える上で重要なのが、自分が「何のために働くのか」を明確にすることです。仕事をする目的は人それぞれ異なりますが、大きく分けて以下の3つに分類することができます。
1.生計を立てるため:収入を得て、生活を安定させるために働く。これが最も基本的な働く目的です。
2.自己実現のため:自分の能力や才能を活かし、成長や達成感を感じるために働く。
3.社会貢献のため:社会に役立ち、他人の幸せや社会の発展に寄与するために働く。
これらの目的は相互に排他的ではなく、同時に追求することも可能です。自分が何のために働きたいのかを定期的に見つめ直し、自分自身と向き合うことで、より充実した仕事生活が送れるでしょう。
(3)仕事や会社から何を求めるのか
仕事や会社から何を求めるかは、「仕事の価値観」を構成する大切な要素です。これは、「報酬」や「労働環境」など具体的な待遇だけでなく、「キャリアアップの機会」や「自己実現」など、個々が仕事から得たいと望む成果や経験を示します。
これらを見直すことで、仕事に対する満足度やモチベーション、そして将来のキャリアプランについて深く考えるきっかけになります。
4.仕事の価値観を見つける方法
(1)自己分析を行う
自己分析を行うとは、自分自身の強み、弱み、好きなこと、苦手なことを理解し、それを元に自分の「仕事の価値観」を明らかにするプロセスです。具体的には以下のようなステップを踏みます。
- 強み・弱みの洗い出し 自分が得意とするスキルや知識、他人から評価される特性をリストアップします。逆に、改善が必要な点や苦手とすることも一緒に挙げてみましょう。
- 好き・嫌いの分析 自分が何を好きで、何が苦手か、どんな時に楽しく感じるかを整理します。これらは自分がモチベートされる条件や、ストレスを感じる要素につながります。
- 価値観の把握 自分が何を大切にし、何を求めているのかを考えます。これは、選ぶ仕事や働き方に大きく影響します。
以上の自己分析を通じて、自分だけの「仕事の価値観」を見つけることができます。
(2)他の人の仕事観を参考にする
自分自身の「仕事の価値観」を見つける方法の一つとして、他の人の仕事観を参考にすることがあります。
まず、身近な人々、例えば親や友人、先輩や上司など、自分が尊敬する人々の仕事観を把握するために話を聞くことが有効です。それは以下のような質問を通じて行うことが可能となります。
- その人が仕事で何を重視しているか?
- どういう時に仕事の達成感を感じるか?
- 仕事で一番大切だと考えていることは何か?
また、学んだ事項を表にまとめることで、視覚的に把握しやすくなります。これにより、自分自身が何を重視するのか、どのような仕事観を持つことが自分にとって充実した働き方につながるのか、具体的な指針を見つけることができるでしょう。
(3)キャリア・アンカーを取り入れる
キャリア・アンカーとは、自分が本当に求めている仕事の本質や、働く上で大切にしたい価値観を明確にするツールです。MITのエドガー・シャイン教授によって提唱され、彼の研究に基づき8つのアンカーが定義されています。これらは技術・関数的能力、管理能力、自律・独立、安定・セキュリティ、起業精神・創造性、サービス・専門知識、純粋な挑戦、ライフスタイルなどです。
自分のキャリア・アンカーを見つけることで、自己理解が深まり、仕事の価値観を更に明確化することができます。例えば、「純粋な挑戦」をキャリア・アンカーとする人は、難易度の高い目標を追求することに喜びを感じ、それが仕事へのモチベーションに繋がります。
定期的に自身のキャリア・アンカーを見直すことで、自分の仕事に対する価値観が変化していないかチェックしましょう。これは、仕事に対する満足度や幸福感を高めるために重要なステップです。
5.面接での「仕事の価値観」の伝え方と回答例
(1)結論から話す
会話の中で自身の「仕事の価値観」を伝える際、まずは結論から話しましょう。面接や商談などでは、相手を惹きつけ、理解を深めてもらうための効果的な手法です。
具体的には以下のようなステップで進めます。
- 最初に自分の価値観を明確に述べる 例:“私はチームでの協力を重視するタイプです。”
- その価値観がどのように行動や結果に反映されるか具体例を出す 例:“これまでの職歴でも、複数人で取り組むプロジェクトが多く、そこでの協力体制が良好な場合には良い結果を生んできました。”
- その価値観がなぜ自分にとって大切なのか説明する 例:“だからこそ、私にとってはチーム全体が一体となって働く環境が重要です。”
このように、結論から話すことで相手に自分の価値観を明確に理解してもらうことができます。
(2)その価値観を持った理由やエピソードを話す
インタビューや面接で自分の「仕事の価値観」を伝える際、その根拠となるエピソードや体験を共有することが重要です。これは、あなたの価値観が具体的かつ信頼性のあるものであることを示すためです。
例えば、あなたが「チームワーク」を大切にするという価値観を持っている場合、「以前のプロジェクトでチーム全員の協力がなければ成功しなかった経験があり、それによりチームワークの大切さを痛感した」といった体験談を伝えると良いでしょう。
このように具体的なエピソードを交えて伝えることで、あなたの価値観がただの抽象的な概念でなく、実際の経験から得られたものであることを示すことができます。
(3)自分の仕事観と企業がマッチする理由を述べる
企業とのマッチングは、仕事の価値観を適切に伝える上で大切なポイントです。その理由を述べる際は、以下の観点から話すと良いでしょう。
- 企業のミッションやビジョンと自分の価値観の一致 「私は品質の向上に価値を感じており、貴社が提供する製品の高品質さに魅力を感じています。」
- 企業の働き方や制度と自分の働き方の一致 「私は自由で創造的な働き方を好むため、貴社の柔軟な働き方が自分の価値観とマッチします。」
- 企業カルチャーやチームの価値観と自分の人間関係の価値観の一致 「貴社のコラボラティブなカルチャーは、私がチームで働くことを重視する価値観と合致しています。」
これらの観点から具体的に述べることで、自分の仕事の価値観が企業とどのようにマッチしているのかを明らかにすることができます。
6.仕事の価値観を見直すための具体的なアクション
(1)定期的に自分の価値観と行動を見直す
定期的に自分の価値観と行動を見直すことは、自己理解を深める有効な手段です。日々の業務に追われ易い仕事の現場ですが、一度立ち止まって自己反省する時間を設けることが大切です。
具体的には、自分が何を重視し、どのような行動を取っているかをリストアップしてみましょう。以下のような表を作り、定期的にチェックすることがおすすめです。
価値観 | 具体的な行動 |
---|---|
チームワーク | 一緒に働く人々とのコミュニケーションを重んじる |
自己成長 | 新たなスキル習得のために自己学習時間を設ける |
このような自己分析を通じて、現在の自分が理想とする働き方に近づいているか、あるいは遠ざかっているかを確認し、必要に応じて行動パターンを修正することができます。
(2)新しい経験や視点を得るために様々な人と交流する
新しい経験や視点を得るためには、自分の職場だけでなく、様々な業界や職種の人と交流することが大切です。一見関連性のない人々との交流でも、新たな視角を提供してくれることがあります。例えば、ネットワーキングイベントやセミナーに参加する、または専門的なオンライングループに参加することで、こうした交流を増やすことができます。
さらに、多様なバックグラウンドを持つ人々との意見交換は、自分の仕事の価値観を深めるための新たな洞察を得る機会にもなります。異なる視点からの意見や経験を聞くことで、あなた自身の仕事観を再評価するきっかけにもなるでしょう。
【新しい視点を得るための交流方法】
・ネットワーキングイベントに参加する
・オンライングループに参加する ・異業種交流会に参加する
・多様なバックグラウンドを持つ人々と話す
これらの方法を通じて、自分の仕事の価値観を見直したり、新たな視点を得ることが可能になります。
(3)専門家やメンターの助けを借りる
価値観の見直しは自己反省だけでなく、他者の視点も非常に重要です。特に、専門家や経験豊富なメンターからの助言は、自分では気づかない新たな視点を提供してくれます。
たとえば、キャリアカウンセラーは、あなたの興味、能力、価値観をベースにしたキャリアプラン作りをサポートしてくれます。また、あなたが尊敬する業界の専門家や先輩は、その分野で成功するための具体的なアドバイスや経験談を聞くことができます。
一方、メンターはあなたの成長を長期的に見守り、価値観の形成や見直しを深くサポートします。メンターからは、自分の価値観が仕事や人生にどう影響しているかを理解するための貴重なフィードバックを得ることができます。
このように、専門家やメンターからのフィードバックは、自己理解を深め、価値観を見直す強力な手段です。
7.まとめ:仕事の価値観を理解し、豊かな人生を送るために
仕事の価値観を理解し、それに沿って行動することで、私たちはより満足感のある職業生活を送ることができます。それは、自己認識の一部であり、仕事のやりがいやモチベーションを見つけるうえで不可欠な要素です。
また、仕事の価値観を定期的に見直し、新しい経験や視点を取り入れることで、自身の成長につながります。また、専門家やメンターの意見を参考にすることも有効な方法です。
仕事の価値観は、自身のキャリア観や人生観を形成し、豊かな人生を送るための大切な道しるべとなります。自己分析を通じて自分自身の仕事の価値観を理解しましょう。
【1:仕事の価値観見直しのステップ】
- 自己分析を行う
- 他人の視点や経験を取り入れる
- 専門家やメンターのアドバイスを参考にする