心理学が語る「区別バイアス」って何？その定義と身近な例を解説

February 21, 2024

1.はじめに

心理学の世界には、私たちの日常生活や意思決定に影響を与える概念がたくさん存在します。その中でも今回は「区別バイアス」という認知バイアスに焦点を当て、その具体的な定義や事例、それによる影響を詳しく解説します。

区別バイアスはあまり耳慣れない言葉かもしれませんが、私たちの生活に密接に関連しています。それは、選択肢を選ぶときや意思決定の際に無意識に働く心理的な働きと言えます。

今後の章では、具体的な事例を通じて、区別バイアスがどのように働き、どのような影響を持つのかについて紐解いていきます。それによって、我々はより良い意思決定をする助けとなることでしょう。

2.「区別バイアス」の定義

(1)「区別バイアス」とは

「区別バイアス」は心理学の用語で、私たちが情報を処理する際に見せる一種の誤った認知の傾向を指します。具体的には、似ているようで微妙に異なる2つの選択肢がある場合、その違いが大きく見えやすいという現象を指します。

これを表で説明すると以下のようになります。

選択肢A	選択肢B
彩度70%の青	彩度60%の青

例えば、上記の2つの青色を比べると、彩度の違いが大きく感じられます。しかし、他の色と比較した時、その違いはあまり顕著でないと感じられるでしょう。これが「区別バイアス」の一例となります。

(2)心理学における位置づけ

心理学では、「区別バイアス」は認知バイアスの一つとして位置づけられています。認知バイアスとは、私たちが情報を処理し、判断や決定を下す際に影響を及ぼす思考の偏りや誤った理解のことです。以下の表は、認知バイアスの一部を示したものです。

認知バイアスの種類	内容
確証バイアス	自分の既存の信念を支持する情報を優先的に選び探し求める傾向
利用可能性ヒューリスティック	記憶に容易に浮かんだ情報を過大評価する傾向
錯覚相関	関連性のない二つの事象の間に関連性を見いだす傾向

これらの中で、「区別バイアス」は、選択肢が増えるほどその差異が拡大され、意思決定に影響を及ぼすという特性を持つバイアスです。これにより、私たちの日常生活の中で様々な意思決定が偏りがちになることを認識することが重要です。

3.区別バイアスの具体的な事例

(1)「幸福度」に関する実験例

“区別バイアス”がどのように働くかを理解するために、”幸福度”に関する興味深い実験例をご紹介します。この実験では、同じ品質のコーヒーを提供された2つのグループがありますが、一方のグループには高級なブランドとして提供され、もう一方には安価なブランドとして提供されました。

試験グループ	提供されたコーヒー
Aグループ	高級なブランド
Bグループ	安価なブランド

結果は驚きで、コーヒーの味や品質は同じでも、Aグループは「美味しい」と感じ、幸福度が上昇しました。一方、Bグループは同じコーヒーに対して「普通」と評価しました。この結果から、私たちの判断や感情は、情報の提示方法や枠組み（フレーミング）に大きく影響されることが分かります。これがまさに区別バイアスの一例なのです。

(2)「選択肢」に関する実験例

区別バイアスが選択肢に影響を及ぼす一例として、よく引用されるのが「ジャムの実験」です。具体的な内容は以下の表でご覧いただけます。

＜実験手順と結果＞

項目	実験内容
実験1	店頭に24種類のジャムを配置、試飲可能に
実験2	店頭に6種類のジャムを配置、試飲可能に
結果	24種類配置した方が試飲者は多いものの、購入率は6種類の方が高かった

この結果は、選択肢が多すぎるとその中から一つを選び出すのが難しくなり、結果的に購入に至らないことを示しています。これが「区別バイアス」の一種である「選択肢のパラドックス」です。

(3)「消費行動」に関する実例

消費行動における区別バイアスの一例として、「商品の選択」が考えられます。例えば、スーパーマーケットで洗剤を買う際、同じ価格だとしたらどちらを選びますか？Aブランドの洗剤には「強力洗浄」と書かれていて、Bブランドの洗剤には「環境にやさしい」と記載されています。

多くの人は選択肢が明確に区別される場合、それぞれの特性（この場合、「強力洗浄」か「環境にやさしい」か）を基に選択します。これは「区別バイアス」が働いている一例です。このバイアスがなければ、両者の違いを無視してランダムに選ぶか、あるいは他の要素（例えば、パッケージデザイン）で選ぶかもしれません。

このように、私たちの消費行動においても、区別バイアスが働くことで選択肢が明確化され、購入行動へとつながるのです。

4.区別バイアスがもたらす影響

(1)意思決定への影響

区別バイアスは、私たちの日常的な意思決定に大きな影響を及ぼす存在です。例えば、人は似通った2つの選択肢がある場合、微妙な差異に過度に焦点を当ててしまいがちです。これが区別バイアスの働きです。

表1: 意思決定時の区別バイアスの影響

選択肢	区別バイアスの影響
Option A	選択肢間の小さな差異が大きく見える
Option B	適切な判断が難しくなる

このバイアスにより、他の重要な要素を見落としてしまうこともあります。相対的な比較による評価が強調され、選択肢自体の真の価値を正確に判断することが難しくなります。これにより、最終的な選択が本来の目的から外れる可能性も高まります。全体の視点を持つことで、この区別バイアスからの影響を最小限に抑えることが可能です。

(2)信念に対する影響

「区別バイアス」は、私たちの信念に大きな影響を及ぼします。例えば、自分が特定の商品やブランドに対して好意的な信念を持っている場合、似たような製品でもその商品やブランドだけが秀でて見えるという区別バイアスが生じます。

このような特性は、1のように自己肯定バイアスと深く関連しています。

1: 区別バイアスと自己肯定バイアスの関係

区別バイアス：自分の好きなものは他より優れて見える。
自己肯定バイアス：自分に都合の良い情報は真実と受け入れやすい。

以降で説明する認知バイアスの理解と対策を通じて、自身の信念が正確で公正なものであることを確認することが重要です。

5.区別バイアスを理解し活用する方法

(1)認知バイアスの理解

認知バイアスとは、人間が情報を処理する過程で無意識的に犯してしまう判断の偏りのことを指します。このバイアスは、我々の意思決定や行動に影響を与え、時として不合理な結果を招くこともあります。

区別バイアスも、これら認知バイアスの一種です。この区別バイアスは、具体的には「2つ以上の選択肢がある状況で、相対的な差異が大きい方を選びがちになる」現象を指します。たとえば、同じ価格の商品Aと商品Bがあり、商品Aの性能が2、商品Bの性能が3だとしたら、多くの人は商品Bを選びます。しかし、性能が10の商品Cが加わった場合、商品Aと商品Bの差は1ですが、商品Bと商品Cの差は7であるため、商品Bの価値が相対的に低く見えてしまうのです。

このように理解することで、区別バイアスがどのように我々の選択に影響を及ぼしているかを把握することができます。