深まる自己理解へ！エニアグラムとは？その魅力と効果的な活用法

February 14, 2024February 18, 2024

1. はじめに：エニアグラムとは何か

エニアグラムとは、人間の性格を9つのタイプに分けて理解する心理学的ツールです。これらは改革者、助ける人、達成者、個性派、調査者、忠実家、楽天家、挑戦者、平和を求める人の9つです。

このエニアグラムの概念は、自己理解を深め、コミュニケーションの改善、パーソナルコーチングなどに活用されています。その他にもチームビルディングやリーダーシップの育成にも役立てられます。

エニアグラムは、人の内面にある動機や思考パターンを明らかにし、自己理解を深めるための羅針盤ともいえます。この記事では、そのエニアグラムについて詳しく解説します。

2. エニアグラムの概念について

(1) エニアグラムの起源と意味

エニアグラムは、その起源が古代の神秘思想にまでさかのぼるとされ、近代では心理学の一分野として発展しました。”エニアグラム”はギリシャ語で、「エニア」が「9」を、「グラム」が「図」を意味することから、「9つのポイントを持つ図」と訳されます。

この9つのポイントは、人間の性格を9つのタイプに分類し、それぞれの性格パターンの強みや弱み、成長の方向を示します。エニアグラムは単なる性格診断以上に深い自己理解と他者理解を支え、人間関係の向上やパーソナル成長に役立てることができます。

エニアグラムの目的は、自分自身をより深く知り、理解し、自己成長に繋げることです。また、他人の性格タイプを知ることで相手への理解を深め、より良い人間関係を築くきっかけにもなります。

(2) エニアグラムの目的と効果

エニアグラムの目的は、自己理解を深めることにあります。自分自身がどのような価値観を持ち、どういう行動傾向があるのかを明らかにすることで、自己理解が深まります。これは、自己変革や成長に有益であり、ストレスの原因を見つけて克服する手助けにもなります。

効果としては、以下の3つがあります。

自己啓発：自己の性格タイプを知ることで、自己理解が深まり行動改善に繋がります。
コミュニケーション能力向上：他人の性格タイプを理解することで、相手への理解が深まり円滑なコミュニケーションが可能となります。
チームビルディング：各メンバーの性格タイプを把握することで、互補的な役割分担やチーム内の調和を促進します。

エニアグラムは、個々の性格タイプの理解を深めるためのツールであり、自己や他人への理解を深めることでより良い人間関係を築くことを目指します。

(3) 3つのセンター（本能、感情、思考）について

エニアグラムでは、人間のパーソナリティを3つのセンター（本能、感情、思考）に分けて考えます。これらは、私たちが行動を取る際の基本的な動機づけとなる要素です。

本能センター：これは、生存、安全、快適さといった基本的な人間の欲求を満たすために必要なエネルギーを表します。タイプ8、9、1が該当します。
感情センター：我々の感情的な反応を表すセンターで、人間関係や自己価値に対する深い感じ方を反映します。タイプ2、3、4がこのセンターに該当します。
思考センター：理解し、情報を分析し、策略を立てるためのエネルギーを表します。認知と理解の過程に重点を置きます。タイプ5、6、7がこのセンターに関連します。

これらのセンターの1つが主導権を握り、他の2つがその下で働く形でバランスを保っています。これにより、私たちの性格は9つの異なるパターンにマッピングされます。

3. 9つの性格タイプとその特徴

(1) タイプ1：改革する人（正しくあろうとする人）

タイプ1は「改革する人」または「正しくあろうとする人」と称されます。高い道徳観と正義感を持っています。自己と他人を含む世界全体をより良くしようという強い思いを抱き、常に目の前の問題を修正し改善しようとします。

特性	具体的な行動
完璧主義者	ミスを許容せず、全てにおいて最高の結果を求め続けます
公平	公正な対応を心掛け、不公平な事象に対して強く反発します
責任感	信念を持って行動し、約束や責任を果たします

しかし、自分自身に厳しく、他人にも同じ基準を求めるため、周囲との摩擦を生むこともあります。自身の価値観が絶対であると誤認識する傾向があるため、自己反省と他視点の理解を意識することが大切です。

(2) タイプ2：助ける人（人の助けになりたい人）

タイプ2は、「助ける人」もしくは「人の助けになりたい人」として知られています。彼らは共感力が強く、他人を思いやることができます。タイプ2の人々は、他人を助けることに深い喜びを感じ、自己価値を見出します。

以下に、タイプ2の特徴を簡単にまとめた表を示します。

特徴	説明
人間関係	他人との強いつながりを重視し、相手の幸せを自身の幸せと感じる
高揚	他人を助けることで自己実現感を得て、喜びを感じる
挑戦	自己犠牲を厭わず、人々のニーズに応えるために行動する

しかし、彼らは他人のために過剰に尽力し、自身のニーズや欲求を無視する傾向があります。これは自分自身を見失う可能性があるため、バランスを保つことが重要です。

(3) タイプ3：達成する人（成功を追い求める人）

エニアグラムのタイプ3は、「達成する人」または「成功を追い求める人」と呼ばれます。彼らは自己価値を確立するために、常に成果を出すことに一生懸命になる性格です。自己実現と成功の追求が主な動機で、そのためには自分の努力とパフォーマンスが中心となります。

以下の表は、タイプ3の主な特性としてよく挙げられる要素をまとめたものです。

特性	説明
努力家	目標達成のために努力し続けます。
自己肯定	自己の価値は成功によって確立されると信じています。
実行力	アイデアや計画を具体的な行動に移す力があります。
競争心	勝つこと、一番であることを極めて重視します。

しかし、タイプ3の人は自分の感情を無視する傾向があるため、感情のバランスや自己理解に注意が必要です。

(4) タイプ4：個性的な人（特別な存在であろうとする人）

「タイプ4：個性的な人」は、一般的に自分自身を特別な存在と捉え、他者とは異なる独自の世界を持つことを希求します。ここでは、その特性を以下の表で整理してみましょう。

【タイプ4の特性】

特性	内容
自己認識	自分は他とは違う個性的な存在
価値観	美学や感情に深く対話する
ストレス時	内向して感情が不安定に

タイプ4の人々は、美学や感情に深く対話し、それらを通じて自己を表現します。自己理解が深まると、自分の内面世界を理解し、他者との共感を促進する力が増します。ストレス時には、自己を内向して感情が不安定になる傾向があります。それらを理解することで、自己認識を深めることができます。

(5) タイプ5：調べる人（知識を得て観察する人）

「調べる人」タイプとは、自身の世界を理解しようと、知識を得ることで精神的な安全を保つことを重視する人のことを指します。

表1：調べる人タイプの特徴

強み	弱み
観察力が強く、複雑な問題を明確に整理できる	脱線しやすく、新たな知識を得るために本質から逸れることがある
独立心が強く、自己啓発に力を入れる	人間関係において孤立することがある

彼らは好奇心が旺盛で、常に新しい知識を追求しつつ、自分自身の知識を深めることで信頼感を得ます。しかし、その結果として人間関係や感情的な関わりから遠ざかる傾向があります。

ビジネスシーンでは、このタイプの人々は専門知識を活かし、情報収集やデータ分析などの領域で真価を発揮することができます。しかし、過度の内向性から、チームワークやコミュニケーションに課題を抱えることもあるため、バランスが求められます。

(6) タイプ6：忠実な人（安全を求め慎重に行動する人）

エニアグラムの性格タイプ6は、「忠実な人」です。安全と安定を求め、危険や不安を避けるために慎重な行動をとる傾向があります。

【特徴】

安全を求める
心配性であることが多い
疑い深く、自分自身や他人を信じるのが難しい

表１．タイプ6の特性

項目	内容
長所	誠実で責任感が強く、周囲を配慮する
短所	不安感が強く、過剰な心配をすること
適職	法律家、教師、カウンセラーなど

彼らは自分自身や他人に対して疑い深いですが、それは安全を確保するための防衛機制です。しかし、その一方で彼らは非常に誠実で、困難な状況でも任務を遂行する強い責任感を持っています。

(7) タイプ7：熱中する人（楽しさを求め計画する人）

タイプ7は、楽観的でエネルギッシュな性格を特徴とします。新しい経験や冒険を追求することが好きで、可能性に満ちた未来への期待感から、熱中して活動します。

-【性格特性】主な特性として、楽天的、多趣味、好奇心旺盛、計画好き、適応性が高い、といったものが挙げられます。常に新しい刺激を求め、豊かな想像力と創造性に溢れています。

-【課題】一方で、焦燥感や不安感を抱えやすく、物事がうまくいかないときや、自分が望むものを得られないときにフラストレーションを感じやすい傾向があります。

-【成長の方向】成長するためには、自分の内面と向き合い、一瞬一瞬の喜びを感じることが大切です。また、計画ばかりを立てず、現在の状況に満足し、受け入れることも重要となります。

このような理解を深めることで、タイプ7の方々は自己理解を深め、より良い人生を送る手助けとなるでしょう。

(8) タイプ8：挑戦する人（強さを求め自己を主張する人）

タイプ8は「挑戦する人」と呼ばれ、強さと自己主張を重視する性格タイプです。

彼らは一般的に、自分自身の力で問題を解決しようという強い意志を持っています。そのため、直観的で、果敢に行動し、自己主張が強いことが特徴です。

以下、タイプ8の特性を表形式で示します。

特性	説明
強さ	自分の力で問題を解決しようとする強い意志
自己主張	自己主張が強く、自分の意見や感情をはっきりと表現する
行動力	果敢に行動し、挑戦的な態度を持つ
直観的	状況を直観的に理解し、迅速な判断を下す

しかし、タイプ8は自己を守るために他人を支配しようとする傾向もあります。そのため、他人に対する配慮や共感を持つことも重要です。

(9) タイプ9：平和をもたらす人（調和と平和を願う人）

エニアグラムの性格タイプの中でもタイプ9は、「平和をもたらす人」と呼ばれ、心地よさや平穏を求める傾向が特徴となります。彼らは周囲との調和を大切にし、対人関係においても争いごとを避ける傾向があります。

タイプ9の特徴：

「和平」を重視：彼らは極力争いを避け、安心感や平穏を求めます。
「受け入れ」の姿勢：彼らは他人の意見を尊重し、全体の調和を保つことを優先します。
「自己放棄」：自身の意見や感情を抑え、周囲に合わせる傾向があります。

しかし、この「自己放棄」は長所だけではなく欠点ともなりえます。自己の感情や意見を無視し過ぎると、自己消滅やパッシブアグレッシブな行動へとつながる可能性もあります。

それ故、タイプ9の人々には、自身の感情に寄り添い、自分自身を大切にすることも重要となります。

4. エニアグラムの診断方法と結果の分析

(1) 診断テストの方法

エニアグラムの診断テストは自己の性格を理解するための重要な足がかりとなります。このテストは大抵、専門家やオンラインで簡単に行うことができます。

まず、一連の質問に正直に答えることから始まります。これらの質問はあなたの日常の行動、思考、感情について尋ねるものです。例えば、「私は人々に喜ばれることを好む」「私は新しい知識をつづけることが好き」などのような質問が提示されます。

その後、各質問に対する回答を元に、最もあなたの性格を反映しているタイプが特定されます。そして、その結果を元にエニアグラムの9つの性格タイプと比較し、自己理解を深めます。これにより自身の強みや改善点を明らかにします。

重要なことは、自分自身に正直であることです。自己評価は常に困難ですが、エニアグラムは自己理解を広げる道具であるため、正直さが求められます。

(2) 診断結果の解釈：センターの確認

エニアグラム診断の結果、あなたの性格タイプが明らかになります。しかし、その解釈には「センター」の確認が欠かせません。センターとは、エニアグラムで考える「本能」「感情」「思考」の3つの心の働きのことを指します。

例えば、タイプ8、9、1は「本能センター」、タイプ2、3、4は「感情センター」、タイプ5、6、7は「思考センター」にそれぞれ所属します。以下に表で示します。

センター	タイプ
本能	8, 9, 1
感情	2, 3, 4
思考	5, 6, 7

このセンターを把握することで、自分がどのような視点で世界を見ているか、どんな反応や行動をとりやすいかがより深く理解できます。

(3) 診断結果の解釈：統合と分裂の方向の確認

エニアグラム診断後に重要となるのは、結果をどう解釈するかです。その中でも「統合と分裂の方向」は重要な要素です。各性格タイプには、ストレス時に移行する分裂の方向と、安心した状態で向かう統合の方向が存在します。

例えば、タイプ1の人は、ストレス状態下ではタイプ4の「個性的な人」の特性を示し、反対に安心した状態であればタイプ7の「熱中する人」の特性に近づきます。

あくまでもこれは一例であり、各タイプ毎に統合と分裂の方向は異なります。診断結果を深く理解し、自己理解を深めるためには、この統合と分裂の方向をしっかりと把握することが重要です。

5. エニアグラムを活用した自己分析と適職診断

(1) エニアグラムで「適性」を把握する

エニアグラムは自己理解だけでなく、適性を把握するツールとしても活用できます。

それぞれの性格タイプには特徴的な能力や適性があります。例えば、「改革する人」であれば、自己の信念に基づいて物事を向上させる力がありますし、「熱中する人」であれば、楽しんで取り組むことで周囲を活性化させる力があります。

以下の表は、エニアグラムの性格タイプごとの適職についてまとめたものです。

エニアグラムタイプ	適性職種
1：改革する人	教師、リーダー、コンサルタント
2：助ける人	カウンセラー、看護師、ソーシャルワーカー
3：達成する人	営業、マネージャー、プロデューサー
4：個性的な人	デザイナー、芸術家、作家
5：調べる人	研究者、エンジニア、分析者
6：忠実な人	警察官、弁護士、セキュリティ担当
7：熱中する人	イベントプランナー、広報、エンターテイナー
8：挑戦する人	経営者、エグゼクティブ、コーチ
9：平和をもたらす人	メディエーター、ヒーラー、サポートスタッフ

自己の性格タイプを理解し、その性格に合った職種を探すことで、より自分自身に合った道を選択することが可能になります。

(2) 性格診断を用いた人材活用

エニアグラムを活用することで、個々の人材が持っている性格タイプを理解し、それぞれの強みを最大限に活かす人材配置が可能となります。たとえば、「達成する人」は目標達成を重視するため、営業職など目標が明確な職種に向いています。「個性的な人」は創造性が豊かであるため、企画やクリエイティブな職種に向いています。

また、チーム編成時にもエニアグラムは有効で、異なる性格タイプの人間がバランス良く含まれることで、多角的な視点を持つ強固なチームを形成することができます。

以下の表は、各性格タイプごとの適職例を示しています。

タイプ	適職例
改革する人	管理職、法務
助ける人	サービス業、教育、医療
達成する人	営業、マーケティング
個性的な人	企画、デザイン
調べる人	研究開発、分析職
忠実な人	企画、管理職
熱中する人	企画、PR
挑戦する人	管理職、リーダーシップを求められる職種
平和をもたらす人	HR、サポート業務

エニアグラムを導入することで、個々の才能を最大限に活かし、全員が自分の仕事に対する満足感と達成感を得られるような組織作りが可能となります。

6. ビジネスにおけるエニアグラムの応用

(1) 人材マネジメントに対するエニアグラムの効果

エニアグラムは、個々の社員が持つ特性や能力を理解し、その最大限の活用を図るためのツールとして、人材マネジメントにおいて非常に有効です。

例えば、エニアグラムの診断結果をもとに、以下のような人材配置が可能となります。

役職	対応するエニアグラム性格タイプ
マネージャー	1型（改革者）、8型（挑戦者）
営業職	2型（助ける人）、3型（達成者）
研究開発	5型（調べる人）、6型（忠実な人）

エニアグラムにより社員一人ひとりの性格や能力を把握することで、彼らが最も生き生きと働ける場所を提供することが可能となります。このような個々の適性に基づいた配置は、組織のパフォーマンスを大いに向上させるでしょう。

(2) 性格タイプ別のリーダーシップスタイル

エニアグラムはリーダーシップスタイルを理解し、向上させるための非常に有用なツールとなります。以下に各性格タイプが持ち得るリーダーシップスタイルを表形式で示します。

性格タイプ	リーダーシップスタイル
タイプ1	公正で正統、理想を追求
タイプ2	支援的で人当たりが良く、他人の要求に対応
タイプ3	成果主義で、目標達成に向けて行動
タイプ4	創造的で独自性を重んじ、新しいアイデアを提案
タイプ5	分析的で詳細にこだわり、深い洞察を提供
タイプ6	信義に厚く、チームの一体感を重視
タイプ7	楽観的で柔軟性があり、多様な可能性を探求
タイプ8	果断で力強く、率直さと正直さを重視
タイプ9	調和を重んじ、全体の平和を維持