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“連言錯誤”とは何?その意味と日常生活での適用例をわかりやすく解説

目次

1.はじめに

本記事では、「連言錯誤」という心理学の用語を解説します。私たちが日常的に接する情報の中に、意識せずとも連言錯誤が含まれていることは少なくありません。しかし、その存在や影響を意識することなく過ごしている人がほとんどでしょう。

「連言錯誤」は一体何なのか、どのようなメカニズムで起こるのか、また日常でどのように適用されているのかについて解説します。また、その具体的な例として有名な「リンダ問題」を取り上げ、実際に連言錯誤がどのように起こるのかを視覚的に理解いただけます。さらに、連言錯誤を防ぐための対策についても触れていきます。

2.連言錯誤とは

(1)定義とその特性

連言錯誤とは、評価や判断の過程で起こる論理的な誤りの一種で、2つ以上の事象が同時に起こる確率を、個々の事象が起こる確率よりも高く見積もるという認知的な偏りを指します。

具体的には、「Aが起こる確率」と「AとBが同時に起こる確率」を考えた時、後者は前者よりも必ず低くなるはずです。なぜなら、AとBが同時に起こるためには、まずAが起こることが条件となり、その上でさらにBも起こる必要があります。それにも関わらず、我々はしばしば「AとBが同時に起こる確率」を誤って「Aが起こる確率」よりも高く見積もる傾向にあります。これが連言錯誤の特性です。

連言錯誤は、我々の日常生活や意思決定、ジャッジメントの中でしばしば見られる現象であり、その理解は我々の合理的な思考や決定を導く重要な鍵となります。

(2)「連言」の意味とは

「連言」という言葉は、日本語ではなじみの少ない言葉かもしれません。しかし、この「連言」とは、論理学の世界で使われる専門用語で、二つ以上の命題が「そして」や「かつ」などの接続詞によってつなげられることを指します。

たとえば、「AはBである」という命題と、「CはDである」という命題があります。これらを「連言」すると、「AはBであり、かつCはDである」という形になります。このような形を「連言命題」もしくは「連言文」といいます。

連言命題の特徴は、各命題が独立していて、それぞれが真偽を持つことです。つまり、「AはBである」が真であれば真、「CはDである」が偽であれば全体の命題も偽になります。

この連言の概念が理解できれば、「連言錯誤」も理解しやすくなります。

3.連言錯誤のメカニズムと起こる原因

(1)論理的ではない結果の出現

連言錯誤が起こる主な原因は、論理的ではない結果を導き出してしまう傾向にあります。人間は情報を処理する際、一部の情報が全体の確率を超えてしまうという誤った結論を導き出してしまいがちです。

具体的には、以下の表のような結果が出てしまいます。

Aの確率Bの確率AとBの確率(連言)
論理的な結果0.60.30.18
連言錯誤の結果0.60.30.4

表からもわかる通り、AとBの両方が起こる確率は、それぞれ単独で起こる確率よりも低くなるべきです。しかし、連言錯誤では、これが逆転してしまうのです。

このような論理的ではない結果が生まれる背景には、人間の認知バイアスが深く関わっています。次の項では、この「もっともらしさ」による認知バイアスについて詳しく解説します。

(2)「もっともらしさ」による認知バイアス

連言錯誤が起こる主な要因の一つに、「もっともらしさ」による認知バイアスがあります。これは、人間が複数の事象や情報を一緒に考えた時、「それらが全て同時に起こる」ことよりも、「一部だけが起こる」ことの方が確率が低いと誤って感じる傾向を指します。

たとえば、「AとBが同時に起きる」ことよりも「Aだけが起きる」確率の方が高いと理解していても、具体的な状況を想像すると「AとBが同時に起きる」ことが「もっともらしい」と感じることがあります。

これは、「連想される情報が多いほどそれが真実であると感じる」という人間の認知の特性から来ています。この「もっともらしさ」による認知バイアスが、連言錯誤の生じる原因となるのです。

4.「リンダ問題」を通して見る連言錯誤の具体例

(1)リンダ問題とその説明

リンダ問題は、連言錯誤を具体的に理解するための名人例です。この問題は心理学者であるアモス・ツヴェルスキーとダニエル・カーネマンにより提唱されました。具体的な設定は以下の通りです。

「リンダさんは31歳の女性で、大学在学中は哲学を専攻し、社会正義について強い関心を持ち、反核デモにも参加していました。」

そして、次の二つの記述があります。

  1. リンダさんは銀行員である。
  2. リンダさんは銀行員であり、かつフェミニストでもある。

リンダさんについてどちらがより可能性が高いと思いますか?多くの人は2の選択肢を選びますが、これが連言錯誤の一例です。次項では、このリンダ問題の詳細な評価を行います。

(2)リンダ問題の個別評価と同時評価

リンダ問題を理解するために、個別評価と同時評価の2つの観点から考えてみましょう。個別評価とは、「リンダは銀行員である」と「リンダは銀行員であり、さらにフェミニストである」という2つの情報を一つずつ判断することを指します。

それぞれの情報を考えた際には、「リンダが銀行員でありフェミニストである」可能性は低そうだと思われるかもしれません。しかし、これらを同時に評価した場合、つまり「リンダが銀行員である」と「リンダが銀行員でありフェミニストである」を同時に比較すると、後者の方がリンダの描写に合致していると感じる人が多いことが研究で明らかになりました。これが連言錯誤の具体例であり、「リンダ問題」のエッセンスです。

(3)リンダ問題に対する批判

リンダ問題は、連言錯誤の具体例として広く知られていますが、一部からは批判の声も上がっています。

まず、調査対象者が「リンダは銀行員よりもフェミニスト運動家である可能性が高い」という選択肢を選んだ理由が、必ずしも連言錯誤によるものではないという指摘です。彼らは単に「フェミニストの銀行員」をイメージがしにくいと判断したのかもしれません。

また、リンダ問題自体が人間の思考を2択の選択肢に限定してしまう点も批判されています。これは人間の複雑な思考を過小評価しているとも言えます。

最後に、「リンダはフェミニストの銀行員である」という選択肢そのものが不自然であるという指摘もあります。そのため、リンダ問題が必ずしも連言錯誤を示す最適な例ではないとする意見も存在します。

5.日常生活で見られる連言錯誤の例

(1)日常生活で頻繁に見られる連言錯誤

日常生活での連言錯誤の例として、「雨が降るといつも傘を忘れる」や「彼はスポーツが得意だから、学業も優秀に違いない」などがあります。これらは、一見論理的に見えますが、実は異なる事象を無理に結びつけて誤った結論を導いています。

例えば、「雨が降るといつも傘を忘れる」は、雨と傘を忘れる事象が必ずしも関連していないのに、連言錯誤により関連性があると錯覚してしまう例です。

また、「彼はスポーツが得意だから、学業も優秀に違いない」も、スポーツの得意さと学業の優秀さは必ずしも直結しないのに、連言錯誤により直接の関連性があると誤解してしまう事例です。

これらは我々が日常的に犯す可能性のある連言錯誤の一例であり、認知の歪みを理解するための参考になります。

(2)連言錯誤が生じやすい状況や条件

連言錯誤が生じやすいのは、「選択肢が複数ある」または「同時に起こり得る複数の事象を評価する」状況です。例えば、商品の選択や予想の立て方などでよく見られます。そもそも人間の認知は限られており、全ての可能性を完全に比較検討することは難しいです。

表1. 連言錯誤が生じやすい状況

状況
選択肢が複数ある新製品の選択、投資先の選択
同時に起こり得る複数の事象を評価天気予報、スポーツの試合結果

連言錯誤は特に、「選択肢が似ている」「情報が多すぎる」「判断基準が不明確」などの条件下で生じやすくなります。これらの条件は、個々の事象を独立して評価するのではなく、全体的な印象や先入観に基づいて判断してしまう傾向を生み出すからです。

6.連言錯誤の防止策

(1)論理的思考の重要性

連言錯誤は、不適切な推論に基づく誤解を生む可能性があります。その防止策として、論理的思考が不可欠となります。論理的思考とは、事実や情報を元に、理にかなった結論を導き出す思考のことを指します。

例えば、”AはBである”、”BはCである”という情報があった場合、”AはCである”と結論づけるのが論理的思考です。以下に表で示します。

情報1情報2論理的結論
AはBであるBはCであるAはCである

しかし、連言錯誤の場合は、”AはBである”、”BはCである”が別々に当てはまるけれど、それらが同時に当てはまるとは限らないという状況です。このような錯誤を防ぐには、情報を正しくつなげるための論理的思考が必要となります。

(2)錯誤の予防策としての情報の精査

連言錯誤を防ぐための一つの方法は、情報の精査です。具体的には、得られた情報をそのまま受け入れるのではなく、それが論理的な結論に繋がるのかを自己検証することが求められます。

例えば、情報源から提供される2つの主張があります。それぞれ「AはBである」と「AはBとCである」。このとき、「AはBとCである」の主張が「AはBである」よりも確率が高いと感じた場合、それは連言錯誤の可能性があります。

ここで大切なのは、主張の確率を独立して評価し、全体の文脈や情報を元に論理的に考えることです。常に情報源を批判的に見る意識を持つことで、連言錯誤に陥るリスクを低減することが可能となります。

7.まとめ

記事を通じて、「連言錯誤」とは、特定の事象が連続する可能性を過大に評価する誤った思考傾向であることを学びました。それが生じる原因は、人間の認知バイアスと「もっともらしさ」によるものです。具体的な例として、「リンダ問題」が挙げられ、この問題を通じて連言錯誤の存在を理解することができます。

また、日常生活でも連言錯誤は頻繁に見られます。適切な判断を行うためには、論理的思考が重要であり、情報の精査が必要です。特に、強い印象や感情が関与する場合は、連言錯誤に陥りやすいと考えられます。

この記事を通じて、連言錯誤についての理解を深め、日常生活での適用例を意識し、正しい判断を行うための一助になれば幸いです。

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この記事を書いた人

自己啓発本やビジネス書など、年間100冊以上を読む運営者が古今東西の自己啓発をおまとめ。明日の自分がちょっと楽しみになるメディアを目指しています。

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