1. グーグル効果とは何か:概要
(1) グーグル効果の定義
グーグル効果とは、情報をインターネットで検索できる現代社会の影響から生じた現象を指します。具体的には、インターネットを使えばいつでも情報を取得できるという認識が、人間の記憶力や記憶の仕方に変化をもたらします。
この現象は、2011年に科学誌「Science」に掲載された「Google Effects on Memory: Cognitive Consequences of Having Information at Our Fingertips」という論文で提唱されました。論文によれば、検索エンジンを利用できる状況では、重要な情報でも記憶に留めるのではなく、どこでその情報を見つけるか、どう検索すれば取得できるかを記憶する傾向が指摘されています。
つまり、「グーグル効果」とは、情報そのものよりその情報の見つけ方を記憶する傾向を指すと定義できます。
(2) グーグル効果が認知に与える影響
グーグル効果が認知に与える影響は大きいです。インターネットの情報サーチが容易になったことで、私たちは必要な情報を覚えるよりも、その情報をどこで見つけるかを記憶する傾向が強くなりました。これは、長期記憶よりも短期記憶の使用が増える結果をもたらしています。
たとえば、ある研究では、被験者に特定の情報を覚えてもらい、その後どれだけ覚えているかをテストしました。情報がインターネットで簡単に見つかることを伝えた群と、そうでないことを伝えた群とで結果に差が出ました。
群 | 結果 |
---|---|
情報がネットで見つかると告げられた群 | 記憶の再現率が低い |
情報がネットで見つからないと告げられた群 | 記憶の再現率が高い |
つまり、情報アクセス性の高さが記憶に影響を与えることが示されました。これがグーグル効果の認知に与える具体的な影響の一つです。
2. インターネットと記憶力:関連研究の紹介
(1) 交換記憶について
交換記憶とは、他者や他のメディア(この場合インターネット)を利用して情報を保存し、必要な時にアクセスする記憶の形式を指します。実際に頭の中に情報を保存するのではなく、どこで情報を見つけることができるかを記憶するという方式です。
例を挙げますと、インターネットで検索したレシピを覚えようとせず、必要な時に再度検索する、という行動が該当します。これにより、私たちの脳は重要な情報の場所を記憶しやすくなります。
項目 | 内容 |
---|---|
交換記憶 | 他者や他のメディア(インターネット)を利用して情報を保存、必要な時にアクセスする記憶の形式 |
具体例 | インターネットで検索したレシピを覚えず、必要な時に再度検索する行動 |
これが「グーグル効果」の一部であり、この現象は私たちの情報処理方法に大きな影響を与えています。
(2) ストループ効果の追試とインターネットの関係
ストループ効果とは、人が色の名前とその文字色が異なる単語を読む際に生じる認知的干渉のことを指します。例えば、「赤」という単語が青色で表示された場合、人はその文字の色(青)を言いにくくなる現象のことです。
このストループ効果の追試が、インターネットとどのように関係するのでしょうか。私たちは、インターネット上で情報を検索する際に、新たな認知的干渉を体験しています。それが「グーグル効果」です。情報が手軽に得られるインターネットの環境下では、我々の脳は情報を記憶するよりも、その情報をどこで見つけるか、どのようにアクセスするかを記憶しようとする傾向があります。
つまり、インターネットとストループ効果の関係性は、私たちがどのように情報を処理し、記憶するかという観点から考察することが重要であり、それが「グーグル効果」の一端をなすと言えます。
3. グーグル効果の日常生活への影響
(1) インターネット利用と情報処理の変化
私たちの情報処理の方法は、インターネットの利用により大きく変化しました。情報を記憶する代わりに、どこで情報を見つけるかを記憶する「トランシエンティブ・メモリ(遷移記憶)」という現象が強まっているのです。
具体的には、以下のような変化が見られます。
変化前 | 変化後 |
---|---|
情報を覚える | 情報の場所を覚える |
記憶力重視 | 検索スキル重視 |
この変化は「グーグル効果」とも関連しており、インターネットが私たちの記憶力に与える影響を示しています。次節では、このインターネットと情報処理の変化が、具体的にどのような影響をもたらすのかを詳しくご紹介します。
(2) 情報保存の傾向:検索した情報の保存について
グーグル効果は、私たちがインターネットで検索した情報についての記憶の傾向も変えています。検索エンジンを利用することで、情報自体よりも情報の探し方やそれがどこに保存されているかというメタ情報を記憶しやすくなります。
つまり、
・情報の内容:あいまい ・情報の発見方法:はっきり ・情報の保存場所:はっきり
といった傾向が見られるのです。
これは、私たちの頭脳が情報を効率的に処理しようとする結果です。しかし、その一方で、情報そのものを記憶する力が低下する可能性が指摘されています。これが、私たちが日々の生活で感じる「何かをすぐに忘れてしまう」現象と関連しているかもしれません。
次章では、この問題を解決するための記憶法やインターネットの適切な利用方法について解説します。
4. グーグル効果の克服法:対策と応用
(1) 効果的な情報の記憶方法
グーグル効果に対抗するための有効な記憶方法として、以下の2つを推奨します。
- 関連性のある情報の結びつけ:情報を記憶する際には、それが他の何と関連しているかを考えてみましょう。関連する情報や事象と結びつけることで、記憶が深まります。例えば、「パリ」を覚える際、「エッフェル塔」や「ルーブル美術館」などの有名なランドマークと関連づけると良いでしょう。
- 定期的な復習:情報を一度だけ読んだり聞いたりするのではなく、時間を置いてから再度その情報を復習することが大切です。これにより、長期記憶に情報が定着します。
これらの方法は、インターネットを利用しながらも効率的に情報を記憶するための手順となります。グーグル効果の影響を受けずに、自身の記憶力を維持・向上させることが可能です。
(2) インターネット利用の最適化
インターネットは情報源として大変便利ですが、グーグル効果によって記憶力が影響を受ける恐れがあります。それを防ぐため、インターネット利用の最適化が必要です。
まずは、情報を必要なときに素早く検索できるよう、検索スキルを身につけましょう。しかし、頼りすぎると記憶力が低下するため、必要な情報だけを効率的に探す能力も大切です。
次に、情報過多にならないよう、自分が必要とする情報だけを厳選することも重要です。そのためには、情報の信頼性を確認するスキルが求められます。
最後に、自分で学んだ情報を他人に教える、いわゆる「フェイマンテクニック」も効果的です。これにより、知識が定着しやすくなります。
以上のような工夫をすることで、グーグル効果を抑制しつつ、インターネットを最大限活用することが可能となります。
5. まとめ:インターネット利用と記憶力の調和
本記事では、インターネットが私たちの記憶力にどのように影響を及ぼすのか、またそれが私たちの日常生活にどう影響するのかを、「グーグル効果」という視点から探りました。
グーグル効果は、情報をインターネットで簡単に検索できる現代において、人々が情報を記憶しようとする動機付けが低下するという現象を指します。しかし、これをマイナス面だけに捉えるのではなく、新たな記憶の形成方法や、情報検索能力の向上というプラス面も同時に捉えることが重要です。
表1. グーグル効果の影響と対策
影響 | 対策 |
---|---|
記憶力低下 | 情報の整理・再整理 |
情報検索依存 | インターネット利用の最適化 |
これらを踏まえ、インターネット利用と記憶力のバランスを保つことが求められます。インターネットは情報取得の手段の一つであり、それを適切に利用しながら記憶力も鍛えることが、現代社会においては必要とされています。