1.はじめに:DISCアセスメントとは?
DISCアセスメントとは、D(Dominance/支配性)、I(Influence/影響力)、S(Steadiness/安定性)、C(Conscientiousness/誠実性)の頭文字を取った心理学的な自己分析ツールです。
このツールは、人間の行動特性を4つのタイプに分け、それぞれの特性を理解することで、自己理解を深めたり、他者との円滑なコミュニケーションを促進したりすることを目的としています。具体的には、以下のような特性があります。
【表1】DISCアセスメントの特性
D (Dominance) | I (Influence) | S (Steadiness) | C (Conscientiousness) |
---|---|---|---|
主導的・決断力がある | 人間関係を重視・共感力が高い | 協調性が高い・規則を守る | 分析的・完璧を求める |
この分析ツールを用いることで、自身の行動傾向を把握し、より良い人間関係や職場環境を築くことが可能です。
2.DISCアセスメントの起源と理論
(1)DISC理論の起源
DISC理論は、アメリカの心理学者ウィリアム・マールストン博士によって1928年に提唱されました。彼の著書「人間の感情」において、人間の行動特性を理解するための理論として初めて登場しました。
マールストン博士は人間の行動が、四つの特性「Dominance(支配性)」「Influence(影響力)」「Steadiness(安定性)」「Conscientiousness(誠実性)」の組み合わせ、つまり「DISC」によって決まると考えました。
特性 | 英語 | 意味 |
---|---|---|
D | Dominance | 支配性 |
I | Influence | 影響力 |
S | Steadiness | 安定性 |
C | Conscientiousness | 誠実性 |
これがDISCアセスメントの起源であり、その後、各種の人間行動分析ツールとして広く使われるようになりました。
(2)DISC理論の基本要素
DISC理論とは、個々の人間の行動特性を以下の4つの基本要素に分けるものです。
①D(Dominance:支配性) 主導性や決定力を表し、自身の意見や目標達成に積極的なタイプを指します。
②I(Influence:影響力) 社交性や表現力を示し、人々との関わりを重視し、情熱的なタイプを示します。
③S(Steadiness:安定性) 協調性や安定性を持つタイプで、時間をかけて物事を考え、落ち着きを保つタイプを示します。
④C(Compliance:規範性) 精密性や組織性を指し、規則や手順を重視するタイプを示します。
これら4つの要素は一人の人間の中にすべて存在し、その配分により個々の行動傾向が決まります。これがDISC理論の基本要素です。
3.行動特性で整理する自己分析ツール:DISCアセスメント
(1)DISCアセスメントの行動特性
DISCアセスメントは、以下の4つの行動特性を基に自己分析を行います。
1.「D(Dominance)」:支配性、決断力、行動力を表す特性です。目的達成に向けて積極的に行動し、リーダーシップを執ることが得意な人がこの特性に当てはまります。
2.「I(Influence)」:影響力、関係性構築力、コミュニケーション能力を示す特性です。人々との関係を重視し、コミュニケーションを通じて影響力を発揮する人が該当します。
3.「S(Steadiness)」:安定性、協調性、忍耐力を表す特性です。組織やチームの和を保つことを好み、円滑な人間関係を維持する能力が高い人が該当します。
4.「C(Conscientiousness)」:誠実性、注意深さ、品質志向性を示す特性です。正確さと順序だてられた進行を重視し、ディテールに優れている人が該当します。
これらの特性は、個々の行動パターンを理解し、強みや課題を把握するための鍵となります。
(2)各行動特性の特徴・強み・課題
DISCアセスメントでは、4つの行動特性―D(Dominance)I(Influence)S(Steadiness)C(Compliance)―があります。
D(Dominance)は、決断力やリーダーシップを持つ人々を示します。特徴としては、自己主張が強く果断な一方で、他者の意見を無視する傾向があるという課題も存在します。
I(Influence)は、人間関係を重視し、コミュニケーション能力が高い人々を示します。強みとしては人々を元気づける能力がありますが、計画性に欠けることが課題となります。
S(Steadiness)は、忍耐力と協調性を持つ人々を示します。安定性と信頼性が強みですが、変化を恐れる傾向があります。
C(Compliance)は、精密さと規律を重んじる人々を示します。一貫性と正確さが強みで、柔軟性に欠けることが課題となります。
4.自己と他者を理解し、コミュニケーションの質を高める
(1)自己理解によるコミュニケーション力向上
DISCアセスメントは、それぞれの行動特性を理解することで、自己理解を深めるのに役立ちます。具体的には、活動的かどうか(D)、交流を好むか(I)、安定を求めるか(S)、規則厳守型か(C)の4つの視点から自分を見つめ直すことができます。
例えば、自分が「D」の行動特性を持つと認識すれば、リーダーシップを発揮することができる一方で、他者から強引と思われる可能性も理解することができます。これにより、自分のコミュニケーションスタイルに気をつけるきっかけになります。
また、「I」の行動特性を持つ人は、人間関係の構築が得意ですが、計画性に欠ける傾向もあります。これを理解することで、計画的なコミュニケーションに努めることが可能になります。
このように、DISCアセスメントを通じて自己理解を深めることで、より良いコミュニケーションを実現することができます。
(2)他者理解によるチームビルディング
チームビルディングにおいて、DISCアセスメントは他者の行動パターンや思考傾向を理解する重要なツールとなります。各メンバーのDISCプロフィールを把握することで、誰がリーダーシップを取るべきか、また、誰が詳細な仕事を最も効率的にこなすかなど、役割分担の参考になります。
例えば以下のような役割分担が考えられます:
- Dタイプ: プロジェクトのリーダーシップを担当
- Iタイプ: コミュニケーションや関係構築を主導
- Sタイプ: 団体の調和を保ち、ストレス緩和に貢献
- Cタイプ: 細部の精度や質を確保
このように、DISCアセスメントを活用することで、メンバーそれぞれの特性を最大限に活かし、チーム全体の生産性や協調性を高めることが可能になります。
5.DISCアセスメントの活用シーン
(1)組織文化の変革における活用法
組織内でのDISCアセスメントの活用は、組織文化の変革に大いに役立ちます。まず、各メンバーの行動特性を明らかにすることで、内部コミュニケーションの質を向上させることが期待できます。
例えば、D型のリーダーとS型のメンバーがいた場合、D型のリーダーは自己主張が強く、決断力がありますが、S型のメンバーは安定を求め、変化を嫌う傾向があります。このような性格差が理解できれば、リーダーはS型のメンバーの特性を考慮したコミュニケーションをとることが可能となり、組織内部の摩擦を減らすことができます。
また、DISCアセスメントを活用することで、チームの人間関係を可視化し、役割分担やチームビルディングに活かすことも可能です。これにより、組織内でのコラボレーションが円滑になり、全体としての生産性向上につながるでしょう。
(2)マネジャーのピープルスキル向上のための活用法
マネジャーのピープルスキル向上にDISCアセスメントを活用するのは大変効果的です。まず、マネジャー自身が自分の行動特性(D,I,S,C)を理解することで、自己理解を深め、コミュニケーションスタイルを見直すきっかけになります。
また、部下一人ひとりの行動特性を把握することで、その人の強みや発展可能性、そしてモチベーション源を理解することができます。これにより、部下の能力を最大限に引き出し、チーム全体の生産性を向上させることが可能になります。
具体的な活用法としては、以下のようなものが考えられます。
【1:マネジャーのピープルスキル向上のためのDISCアセスメント活用法】
・自身の行動特性理解:自分自身の強みや課題を理解し、コミュニケーションスタイルを見直す。
・部下の行動特性把握:各部下の行動特性を理解し、その人に合った育成方法やコミュニケーション方法を模索する。
このように、DISCアセスメントは人材育成の現場で大いに活用することができ、より良いチームビルディングを実現します。
(3)顧客中心セールスの育成における活用法
DISCアセスメントは、顧客中心セールスの育成においても効果的なツールとなります。それは、このアセスメントが「D:ドミナンス」「I:インフルエンス」「S:ステディネス」「C:コンプライアンス」という行動特性を明らかにし、人の行動傾向を理解するのに役立つからです。
具体的な活用法としては、まず営業メンバー自身が自分のDISCタイプを理解し、それによって自分がどのようなアプローチを好むかを把握します。そして、顧客とのコミュニケーション中における顧客の言葉遣いや行動から、その顧客がどのDISCタイプに該当するかを見極め、その顧客タイプに合ったアプローチをすることで、効果的なセールスが可能となります。
たとえば、’D’タイプの顧客であれば、直接的なコミュニケーションと迅速な結論が求められるでしょう。逆に、’S’タイプの顧客であれば、時間をかけてじっくりと信頼関係を築くことが重要となります。このように、DISCアセスメントを活用することで、顧客一人ひとりに対する適切なセールス戦略を立てることが可能です。
6.まとめ:DISCアセスメントを最大限に活用するために
DISCアセスメントは、自身の行動特性を理解し、他者とのコミュニケーションの質を高めるツールとして有効です。
まず、自己理解を深めるために、あなた自身のDISCプロフィールを把握しましょう。これにより、自分の強みや課題を明確に理解することができます。
また、チームメンバーやパートナー、顧客など他者のDISCプロフィールを理解することで、相手の行動特性を尊重し、円滑なコミュニケーションを促進することが可能となります。
そして、DISCアセスメントを組織全体で共有することで、組織文化の変革やマネジャーのピープルスキル向上、顧客中心のサービスへの取り組みなど、様々な場面で活用することができます。
まとめると以下の表のようになります。
活用法 | 具体的な方法 |
---|---|
自己理解 | 自身のDISCプロフィールを把握 |
他者理解 | 他者のDISCプロフィールを理解 |
組織活用 | 組織全体でのDISCアセスメントの共有 |
最後に、DISCアセスメントは単に個々人の行動特性を評価するだけでなく、人間関係や組織風土の改善に繋がるツールとして使うことが大切です。