キャリアアンカーテストとは？仕事の選択肢を広げるツールを徹底解説

February 14, 2024February 18, 2024

1.キャリアアンカーテストとは？

1-1.キャリアアンカーの概念の紹介

キャリアアンカーとは、MITのシェイン教授により提唱された概念で、個々の働く者が自分自身の仕事に対する価値観や志向、強く持つ動機などを「アンカー（錨）」と捉え、それがキャリア形成の主要な動力となると説明されています。

シェイン教授は人々が自分のキャリアに対して一番大切にしていること、つまり「譲れない価値」をキャリアアンカーと名付けました。例えば、自身の専門スキルを深めることに価値を見いだす人、チームや組織全体をまとめ上げる管理職を志向する人、社会貢献を重視する人など、人それぞれのキャリアアンカーがあるのです。

このキャリアアンカーを理解し、自分の中のアンカーを明確にすることで、自己理解を深め、より自分に合うキャリアパスを模索する手助けになります。

1-2.キャリアアンカーテストが目指すもの

キャリアアンカーテストは、個々の組織員がキャリアにおいて何を重視するのか、その根底にある価値観や欲求を明らかにするツールです。人はそれぞれ異なる価値観をもとに仕事の方向性を決定しています。しかし、これらの価値観は通常意識されにくいものです。

キャリアアンカーテストの目指すものは「自己理解」です。自分が何を求め、何を価値とするのかを理解することで、より適切なキャリア選択を可能にします。また、これは組織全体にとっても有益であり、個々の組織員が自身のキャリアをどう捉えているのか理解することで、人材育成や配置の適正化が図られます。

以下は、キャリアアンカーテストが目指す具体的な点を表形式で示したものです。

目的	説明
自己理解	自身のキャリアに対する価値観や欲求を明確にし、適切なキャリア選択を支援します。
組織の適正化	組織員のキャリア観を理解し、人材育成や配置の適正化を図ります。

2.キャリアアンカーの種類と特徴

2-1.専門・職能別

専門・職能別のキャリアアンカーとは、特定の技術や専門知識によって自己の能力を証明し、それを通じて自己実現を果たしたいという志向性を指します。このタイプの人々は自分が得意とする分野で深みを増すことに喜びを感じ、そのスキルを最大限に活用することで成果を上げることを目指します。

以下の表は、専門・職能別のキャリアアンカーを持つ人々の特徴を示しています。

特性	詳細
技術習得	新たなスキルや知識を学ぶことに情熱を注ぎます
専門性追求	自分の専門分野におけるエキスパートであることを重視します
継続的な成長	自己の技術や知識を継続的に向上させることに喜びを感じます

このような特性を持つ人々は、専門的な役割や職種に適しており、その分野での知識を深め、技術を磨くことが求められる職場で最高のパフォーマンスを発揮することができます。

2-2.全般管理

全般管理とは、組織全体を統括し、業績を上げる役割を果たすことに喜びや達成感を感じるキャリアアンカーです。これには、戦略策定、人員配置、業績評価などのリーダーシップが求められます。全般管理型の人は、一部門だけでなく全体を管理することに関心があります。

例えば、以下のような特徴があります。

特徴	例
意思決定力	様々な情報から組織全体の方向性を決定
人材開発意識	社員一人ひとりの能力開発に取り組む
業績管理能力	組織全体の業績を把握し、適切な評価を行う

全般管理型の人は、組織全体の流れを把握し、その方向性を定めるための決断力が求められます。また、チーム全体の成長を支えるためには、一人ひとりの社員の能力開発に努めることも大切です。最後に、業績を把握し、適切な評価を下す能力も重要となります。

2-3.起業家的創造性

起業家的創造性に関するキャリアアンカーは、新しい事業や製品を生み出すこと、自己のアイデアやビジョンを具現化することに情熱を感じる人々を指します。これらの人々は一般的に、リスクを取ることや不確実性を受け入れ、自分自身の考えを追求することに喜びを感じます。

起業家的創造性の特徴	具体例
新しい事業・製品作りに情熱	新商品の開発、スタートアップ企業設立など
リスクと不確実性を受け入れる	未知の分野への挑戦、新規事業立ち上げなど

このキャリアアンカーに鑑みて、自分が叶えたい目標やビジョンがあるならば、それを追求するために必要なスキルや経験を積むことが重要です。また、起業家という職業を選ぶだけでなく、既存の組織内でもこの起業家精神を持って仕事に取り組むことが可能です。

2-4.保障・安定

キャリアアンカーテストの中に含まれる「保障・安定」のキャリアアンカーは、職の安定性や経済的な保証を重視する人々を指します。このアンカーを持つ人々は、リスクを避け、一定の生活水準を維持することを望んでいます。

表1. 保障・安定型の特徴

特徴	説明
安定性の追求	日常生活の安定性や仕事の継続性を重要視
リスク回避	経済的なリスクを避け、保証を求める傾向
一定の生活水準	一定の生活水準を維持することへの強い意識

例えば、公務員や大手企業に勤める人はこの「保障・安定」のアンカーに当てはまることが多いです。しかし、全ての公務員や大企業勤務者が保障・安定型であるわけではなく、個々の価値観やキャリア志向によります。

2-5.自律・独立

自律・独立のキャリアアンカーは、自分の仕事やキャリアに対して自分自身で責任を持ちたいという思いを強く持つ人に特徴的です。

このタイプの人は、他人に指示されるよりも自分で判断し、自己決定できる状況を好みます。また、自由に仕事の進め方を選び、独自の方法で問題を解決することを優先します。

以下に、自律・独立のキャリアアンカーを持つ人の典型的な特徴を表にまとめました。

自律・独立のキャリアアンカーの特徴
・自分自身で判断し、責任を持つことを好む
・他人に指示されるよりも、自由に仕事の進め方を選びたい
・自己決定できる状況を優先する
・独自の方法で問題を解決することに重きを置く

このような特性を持つ人は、フリーランスや起業家として成功する可能性が高いです。キャリアアンカーテストを活用することで、自己理解を深め、自分に最適なキャリアパスを見つける手助けとなります。

2-6.奉仕・社会貢献

キャリアアンカーの一つである「奉仕・社会貢献」は、自己の能力や専門性を活かし、社会や他人へ貢献することに喜びや達成感を感じる人に特徴的なキャリア志向です。

具体的には、以下のような行動傾向や価値観が見られます。

社会問題を解決するための仕事に強い関心を持つ
他人の成長や幸福をサポートすることに充実感を感じる
金銭や名誉よりも、社会貢献の実感が仕事の動機となる

このキャリアアンカーを持つ人は、NPOや教育、医療、福祉など、社会的な価値を追求できる職種に向いているとされています。しかし、社会貢献への強い志向がある一方で、給与や待遇などの物質的な報酬については相対的に低い重視度となるため、キャリア選択時にはそういった面も考慮することが重要です。

2-7.純粋な挑戦

「純粋な挑戦」のキャリアアンカーは、自己成長と新たな挑戦を重視するタイプを指します。これらの人々は、自分のスキルや知識を試すために困難な課題を好み、それらに取り組むことで自己の能力を高める喜びを感じます。

表1:「純粋な挑戦」の特徴

特性	説明
成長志向	自分自身のスキルや知識を試し伸ばすことに喜びを感じる
新しい挑戦	困難な課題に対する取り組みが好きで、それが成功体験となる
能力の追求	難解な問題を解決するための自身の能力の発見と追求

しかし、このキャリアアンカーを持つ人々は、挑戦的でない仕事環境や、自己成長の機会が少ない場所では満足感を得ることが難しいかもしれません。そうした状況を避けるためにも、自身のキャリアアンカーを理解し、それに合った職場や役割を選択することが重要です。

2-8.ライフスタイル（生活様式）

ライフスタイル（生活様式）とは、キャリアアンカーテストにおける一つの分類で、個々のキャリア選択を影響づける価値観やライフスタイルの優先度を示します。

このアンカーを持つ人は、仕事とプライベートのバランスを重視し、仕事が生活に適応することを望みます。つまり、自分のライフスタイルに合った職業を求め、仕事と家庭の調和を保つことが最も重要な要素となります。

また、このアンカーでは、仕事が自分の生活様式や体調、家族の状況などにトータルで影響を及ぼさない状態を望み、そのような観点からキャリア選択を行います。

表にまとめると以下のようになります。

ライフスタイル（生活様式）の特徴
1. 仕事とプライベートのバランスを重視
2. 生活様式に合った職業選択
3. 仕事と家庭の調和
4. 仕事が自身の生活全体に影響を及ぼさない事を望む

これらの特徴から自己分析を行い、適切なキャリア形成に役立てることができます。

3.キャリアアンカーテストの診断方法

3-1.質問票による自己分析の方法

キャリアアンカーテストの診断方法として、質問票を用いた自己分析が一般的です。まずは、以下のような項目を含む質問票から自己評価を行ってみましょう。

・専門・職能別：専門スキルや職業能力が重視される仕事に魅力を感じるか？・全般管理：組織全体の統括や管理に興味があるか？・起業家的創造性：新規の事業やプロジェクトを立ち上げ、成果を出すことに喜びを感じるか？

これらの質問に対し、自分がどれくらい当てはまるかを5段階評価で答えます。全ての質問を終えた後、それぞれの項目に対する自己評価の合計点を計算し、一番点数が高いものが自分のキャリアアンカーとなります。

ただし、この結果はあくまで自己分析の一環であり、全てを決定するものではありません。自分自身のキャリアについて深く考えるきっかけとして活用しましょう。

3-2.診断結果の読み解き方

キャリアアンカーテストの診断結果は、自分のキャリア志向を理解するうえで重要な指針となります。結果は大まかに8つのキャリアアンカーから得られ、それぞれが自身の仕事に対する価値観や優先順位を示しています。

診断結果を見た際、得点が高いキャリアアンカーほど自分のキャリアにとって重要な価値観を表しています。たとえば、「専門・職能別」の得点が高い場合、専門知識やスキルを高めることへの意欲が高いことを示します。

逆に、得点が低いキャリアアンカーは、あまり重視していない価値観を表すと解釈できます。しかし、低得点が必ずしも否定的な意味を持つわけではありません。それはただ、自分のキャリアの中で他の価値観よりも優先度が低いという解釈です。

最後に、結果を読み解く際は、全てのキャリアアンカーの得点を比較してみることをお勧めします。その中で、自分のキャリアをどのように進めていきたいのか、どの価値観を重視するのかを再確認することで、より自分自身のキャリア形成に役立てることができます。

4.キャリアアンカーテストを活用することのメリット

4-1.自身のキャリア志向の理解

キャリアアンカーテストは、自分自身のキャリアに対する価値観や志向を深掘りし、理解するための重要な手段となります。具体的には、自分が何に重きを置いて職業生活を送っていきたいのか、どのような価値観を持っているのかといった「キャリアアンカー」を明らかにします。

以下に一部抜粋した表は、キャリアアンカーテストを通じて掘り下げることができる典型的なキャリアアンカーの例です。

キャリアアンカー	説明
専門・職能別	特定のスキルや専門知識を追求したい
全般管理	組織全体の管理やリーダーシップを担いたい
起業家的創造性	独自のビジネスを立ち上げ、育て上げたい
保障・安定	安定した収入や雇用を求めている

このように、自分のキャリアアンカーを明確にすることで、自己理解を深めることが可能です。また、これが職業選択やキャリアプランニングにおける有力な指針となります。

4-2.仕事の選択肢の広がり

キャリアアンカーテストは、自己理解を深めるだけでなく、仕事の選択肢を広げる効果もあります。具体的には、自身のキャリアアンカーを把握することで、自分がどのような職業や役割に適性を持っているか、また、どのような環境で働くことが自己実現に繋がるかが明確になります。

例えば、キャリアアンカーが「起業家的創造性」であれば、新たなビジネスを創出する職種を探すことが適しているでしょう。一方で、「安定・保障」がキャリアアンカーであれば、安定した企業で長期的なキャリア形成を目指すと良いでしょう。

まずは自身のキャリアアンカーを把握し、その結果に基づいて仕事の選択肢を広げてみてください。自分自身の可能性に気づき、自身のキャリアを有意義に進めるための一助となることでしょう。

4-3.組織と個人のミスマッチ防止

キャリアアンカーテストは、組織と個人の間のミスマッチを防ぐ有効なツールとなります。

具体的には、自身のキャリアアンカーを理解することで、自分がどのような組織文化、またはどのような職務内容に適しているかが明確になります。例えば、自律・独立が強いキャリアアンカーを持つ人は、自己決定が尊重される組織や、自分で計画を立てて仕事を進められる職種に向いています。

逆に、全般管理が自身のキャリアアンカーである人は、チーム全体のマネジメントが必要な組織や職種が適しています。このように、自分自身のキャリアアンカーを理解し、それに基づいて組織や職種を選択することで、自分と組織の間での価値観のズレやミスマッチを予防することが可能です。

キャリアアンカーテストを活用することで、自身の職業生活の充実度を高め、職場での満足度を向上させることができます。

5.キャリアアンカーテストを活用する際の注意点

5-1.キャリアアンカー診断の正しい使い方

キャリアアンカーテストは、自身のキャリア選択に影響を与える価値観や志向を把握するためのツールです。その正しい使い方は以下の3点に集約されます。

素直な自己反省：質問票に対して素直に回答しましょう。自己像を美化したり、他人の評価を気にしすぎないことが大切です。
診断結果の再解釈：診断結果はあくまで「現時点での傾向」であり、固定的なものではありません。自身の成長や変化に合わせて結果を適宜見直すことが重要です。
実践と検証：キャリアアンカーに基づき行動することで、その有効性を確認できます。自身のキャリアアンカーと現状を照らし合わせ、適合性を検証しましょう。

これらを心掛け、キャリアアンカーテストを自己理解とキャリア形成の一助として活用することが推奨されます。

5-2.誤解しがちな点とその対処方法

キャリアアンカーテストの結果を理解する際、誤解しがちな点とその対凔方法を解説します。

まず、誤解しがちな点ですが、テスト結果が「一生変わらない絶対的なもの」と捉える傾向があります。しかし、キャリアアンカーはその人の価値観や生き方を反映したものであり、時間と共に変化していく可能性もあります。また、一つのアンカーだけが自身を全て表しているわけではありません。

対処方法としては、テスト結果は一つの指標であると理解し、それを踏まえて自己理解を深め、キャリアプランを考えるための参考資料として活用することが重要です。また、定期的にテストを行うことで変化を捉えることも有効です。

6.まとめ

6-1.キャリアアンカーテストの重要性の再確認

本記事を通じて、キャリアアンカーテストの重要性を再確認しましょう。

キャリアアンカーテストは自己理解のツールであり、間違いなく仕事選択の良きパートナーと言えます。自分の価値観や動機、興味などを掘り下げることで、自身にとって重要な要素が浮き彫りになります。

キャリアアンカーテストの重要性
1.自己理解の深化
2.キャリア選択の支援
3.価値観の明確化

また、自分自身のキャリアパスを明確に示すことで、組織とのミスマッチを防ぐ役割も果たします。組織内でのキャリア形成や職務適性も見えやすくなります。

このように、キャリアアンカーテストは自己理解を深め、自己実現を支援する重要なツールです。キャリア形成において、このツールを有効活用しましょう。

6-2.キャリアアンカーテストを活用したキャリア形成の推奨

キャリアアンカーテストの活用は、自分自身の仕事に対する価値観や志向を理解し、適職を見つけるための有効な手段です。自分がどのようなキャリアアンカーを持っているかを明確にすることで、将来のキャリアパスを見つけやすくなります。以下の表に示すように、各キャリアアンカーごとに適した職業や働き方が存在します。

キャリアアンカー	適した職業や働き方
専門・職能別	専門職、技術職
全般管理	マネージメント職
起業家的創造性	起業、新規事業開発
保障・安定	公務員、大企業
自律・独立	フリーランス、コンサルタント
奉仕・社会貢献	NPO、ボランティア
純粋な挑戦	研究職、スポーツ選手
ライフスタイル（生活様式）	リモートワーク、フレックスタイム制度