1. はじめに
今、身近な存在となったゲーム。その中には、ただ遊ぶだけでなく、自己理解を深めたり価値観を形成する機会が隠されています。本記事では、ゲームを通して自己理解や価値観形成について詳しく解説します。
ゲームを楽しむ過程で、我々は無意識のうちに自己の反応や選択を行います。それらは私たちの内面、すなわち価値観や自己理解に直結しているものです。また、ゲーム内で異なる価値観に触れることは、多様な視点を持つきっかけとなります。これらの体験を通じて、我々は自己理解を深め、価値観を形成していきます。
以下では、まずゲームと価値観・自己理解の関連性について探ります。次に、具体的なゲームの例を挙げながら、それらをどのように活用することで自己理解や価値観形成につながるのかを見ていきましょう。
2. ゲームと価値観・自己理解の関連性
(1)ゲームを通じて見える自己の反応・選択
ゲームは自己の反応や選択を視覚化する最適なツールです。ゲームの中で行う選択一つ一つが、自身の価値観や判断基準を表す鏡となります。
例えば、RPGゲームでの道徳的な選択肢や、パズルゲームでの解法などは、それぞれ我々の思考プロセスや道徳観を反映します。また、マルチプレイヤーゲームではコミュニケーションスタイルやチーム内での役割など、社会性を顕著に表現する機会となります。
以下に具体的な例を表で示します。
ゲームの種類 | 自己の反応・選択 |
---|---|
RPGゲーム | 道徳的選択、キャラクターの育成方針 |
パズルゲーム | 問題解決スキル、創造性 |
マルチプレイヤーゲーム | コミュニケーションスタイル、チーム内での役割 |
これらを通じて、自己理解を深めることが可能となります。
(2)異なる価値観に触れることの意義
ゲームは様々な価値観を体験することが可能です。その意義は大きく分けて以下の二つです。
- 自己の価値観の再確認: ゲーム内での選択や反応を通じて、自己の価値観を再認識する機会を得ます。自己の価値観が他人や社会のそれとどう違うのかを理解することで、自己理解が深まります。
- 価値観の多様性の理解: 異なる価値観に触れることで、自分以外の視点や思考パターンを理解することが可能となります。多様な価値観の存在を認知することは、より幅広い視野を持つきっかけとなります。
以上のように、ゲームを通じて異なる価値観に触れることは、自己理解と他者理解の深化に繋がります。これらは日々のコミュニケーションや問題解決の手助けとなり、豊かな人間関係や社会生活を築く上で重要です。
(3)ゲームでの反応・選択が現実世界に反映する働き
ゲーム内での反応や選択は、私たちが直面している現実世界でも非常に重要な要素です。これらの選択は、実は私たちの価値観を鮮明に映し出す鏡のようなものです。
たとえば、経営シミュレーションゲームで自分がどのような経営を選択するかは、自身の価値観や優先順位を示すことができます。労働者の福利厚生を重視するのか、あるいは利益最優先なのか。これらの選択は、ゲームの範囲を超えて自分自身を理解し、現実世界での行動や意思決定にも影響を与えます。
また、アドベンチャーゲームでは、クエストの選択やキャラクターとの対話、物語の進行方向等、すべてがプレイヤーの個々の価値観を表現しています。ゲームを通じて自己理解を深め、その理解を現実に反映することで、自己成長につながるのです。
次の表は、ゲームと現実世界の行動・意思決定の関係を示しています。
ゲーム内での行動 | 現実世界での反映 |
---|---|
経営の選択 | ビジネスや個々の生活での優先順位 |
クエストの選択 | 日常生活での選択肢と価値観 |
キャラクターとの対話 | 人間関係やコミュニケーションスタイル |
これらを通じて、ゲームは現実世界における価値観や選択を理解し、形成する強力なツールとなり得ます。
3. 価値観を可視化・共有するゲームの例
(1)「Wevox values card」の紹介と活用方法
「Wevox values card」は、自己理解と価値観形成を深めるためのツールです。カードには様々な価値観が記載されており、ゲーム形式で遊ぶことで自己の価値観を客観的に捉えることが可能です。
具体的な活用方法は以下の通りです。
- カードデッキからランダムに5枚のカードを引きます。
- 引いたカードの中から、自分の価値観に最も当てはまるものを選びます。
- 選んだカードを基に、自分の価値観について他者とディスカッションします。
これにより、自己の価値観を具体的に言語化するとともに、他者とのコミュニケーションを通じて理解を深めることができます。また、異なる価値観を持つ他者と話すことで、多様な視点に触れる機会も得られます。
(2)「エンゲージメントカード」の紹介と活用方法
「エンゲージメントカード」は、各カードに書かれたさまざまなアクションやシチュエーションを使って、プレーヤーがどのような反応を示すかを通じて、自分自身や他者の価値観を探求するゲームです。
具体的には、カードに記載されたアクションを実行したり、あるシチュエーションに置かれたときの反応を話し合ったりします。その過程で、自分が何を大切に思っているのか、どんな行動を取る傾向があるのかを理解する機会となります。
また、同じカードに対して他者がどのように反応するかを見ることで、価値観の相違を認識し、相互理解を深めることも可能です。
このゲームを活用することで、自身の価値観の理解はもちろん、他者とのコミュニケーションの質も向上させることが期待できます。
【表1:「エンゲージメントカード」の活用例】
カードの内容 | 自分の反応 | 他者の反応 |
---|---|---|
山登りへ行く | 楽しみだと感じる | 困難と感じる |
新しい仕事を任される | 挑戦することに興奮する | 不安を感じる |
上記の表は一例であり、さまざまなシチュエーションに対する反応は人それぞれであり、それが一人一人の価値観を形成します。
(3)「価値観ゲーム」の紹介と活用方法
「価値観ゲーム」は参加者の価値観を引き出し、共有することを目的としたゲームです。具体的には、様々なテーマについてのカードを用い、参加者が自分の価値観にもとづいてカードを選択します。そして、選んだ理由を他の参加者と共有します。
表1: 価値観ゲームの一例
テーマのカード | 選択理由 |
---|---|
「環境保護」 | 自然環境の重要性を認識し、地球に優しい生活を心掛けている。 |
「教育」 | 教育の機会はすべての人に平等に与えられるべきだと考えている。 |
活用方法としては、自身の価値観を深堀りするだけでなく、他者との価値観を比較・共有することで相互理解を深める狙いがあります。また、選択した価値観が日常生活や仕事にどのように反映されているかを考察することで、自己理解の深化や行動改善にもつながります。
4. ゲームを通じた自己理解と価値観形成の効果
(1)自己理解の深化と自己肯定感の向上
ゲームを通じて自己理解を深めることが、自己肯定感の向上につながります。例えば、ロールプレイングゲームでは、プレイヤーが自分の役割を果たす過程で、自身の思考パターンや行動傾向を観察する機会が提供されます。次の表は、ゲーム中での頻出行動とそれが示す自己理解の一例を示しています。
ゲーム中の行動 | 自己理解 |
---|---|
チームでの共闘を選ぶ | 協調性 |
リスクをとる選択をする | 冒険心 |
戦略的な行動を重視する | 論理的思考 |
これらの認識は、自分自身に対する理解を深め、一方で自分の強みや特性を肯定的に捉えるきっかけとなります。これが「自己肯定感」です。ゲームは架空の世界であるからこそ、日常では気づきにくい自分自身の価値観や特性に気づく新たな視点を提供してくれるのです。
(2)他者理解とコミュニケーション能力の強化
ゲームを通じて他者の価値観や選択に触れることは、他者理解を深め、コミュニケーション能力を高める効果があります。
たとえば、複数人でプレイするゲームの場合、他のプレイヤーがどのような選択をするのか、その背景にある価値観を推測することで、他者への理解を深めることができます。また、自分自身の選択や価値観を他者に説明することは、自己表現能力や他者への配慮、理解力を養うものです。
以下に、ゲームを通じた他者理解とコミュニケーション能力強化のプロセスを表で示します。
ステップ | 内容 |
---|---|
1 | 他のプレイヤーの選択や行動を観察 |
2 | その選択や行動について思考・推測 |
3 | 自分の思考・見解を他者に伝える |
4 | 他者のフィードバックを受け入れ、理解する |
この一連の流れは、ゲーム内だけでなく、日常生活におけるコミュニケーションにも生かすことができます。
(3)価値観の多様性への理解と包容性の育成
ゲームを通じて、自己だけでなく他者の価値観にも触れることが可能です。例えば、多人数でプレイするRPGやボードゲームでは、他のプレイヤーがどういう価値観を持って行動するのかを観察することができます。また、異文化の背景を持つゲームキャラクターとの交流から、自分自身が普段意識しないような異なる価値観に触れる機会も生まれます。
以下に、ゲームを通じた価値観の多様性への理解と包容性の育成の具体例を表にまとめます。
ゲーム | 説明 |
---|---|
ボードゲーム | 他のプレイヤーの考え方や行動から、その人の価値観を理解することができます。 |
RPGゲーム | キャラクターの選択肢やストーリー展開により、多様な価値観に触れる機会があります。 |
これらの経験を通じて、自己の価値観だけでなく、他者の価値観を理解し尊重する包容性も育てられます。
5. ゲームを活用した自己理解と価値観形成の方法
(1)自己理解を深めるためのゲームの選び方
自己理解を深めるためのゲーム選びは、以下の3つの視点がポイントになります。
- 「自己反省が促されるゲーム」:自分の行動や選択、思考パターンを問い直す機会を作るゲームです。例えば、「人狼ゲーム」では自身の行動について他のプレイヤーからフィードバックを得ることができます。
- 「異なる視点を体験できるゲーム」:他者の立場や視点を理解することで、自己理解を深めます。例として「ダンジョンズ&ドラゴンズ」があります。このゲームでは、自身が普段と違うキャラクターを演じることで様々な視点を体験できます。
- 「個人の価値観や意思決定が問われるゲーム」:自己の価値観を問い直すきっかけとなるゲームです。「ライフイズストレンジ」のような選択肢型アドベンチャーゲームは、プレイヤー自身の価値観や倫理観によってストーリーが変化します。
これらの視点を踏まえ、自己理解を深めるためには、自分自身を見つめ直す機会を提供してくれるゲームを選びましょう。
(2)価値観を探求し形成するためのゲームの選び方
価値観を探求し形成するためには、多様な状況設定や選択肢を提供するゲームが有効です。具体的には、道徳的なジレンマを提示するゲームや、異なる視点から物事を考えることを要求するゲームが適しています。
例えば、「The Walking Dead」や「Detroit: Become Human」のような選択肢重視のアドベンチャーゲームは、登場人物の立場や状況により異なる選択肢を選ぶことで価値観を深く探求できます。
また、「価値観カードゲーム」は、自己の価値観を可視化し、他者と共有・議論することで価値観の形成をサポートします。
以下に、価値観を探求し形成するための一部のゲームを表にまとめました。
ゲーム名 | 特徴 |
---|---|
The Walking Dead | 道徳的ジレンマを提示し、プレイヤーが選択する |
Detroit: Become Human | 複数の視点からストーリーを進め、価値観を深く考える |
価値観カードゲーム | 自己の価値観を可視化し、他者と共有・議論する |
これらのゲームを選ぶことにより、自身の価値観を探求し形成することが可能です。ただし、ゲーム選びの際は自身の興味や好みを考慮し、自身に合ったものを選ぶことも重要です。
(3)ゲームで得た自己理解・価値観を日常生活に活かす方法
ゲームで得た自己理解や価値観を日常生活に活かすには、以下の3つのステップが有効です。
- 反省・省察 ゲームを通じて得た自己理解や価値観について、冷静に振り返りましょう。自分がどういった選択をしたのか、それは何故なのかを深く考えることで、自己理解が一層深まります。
- 行動計画 反省・省察を基に、具体的な行動計画を立てます。例えば、「もっとチームワークを重視したい」と気づいたなら、具体的にどのように行動すればその価値観を生活に反映できるのかを考えてみましょう。
- 実践・フィードバック 行動計画を実践し、結果をフィードバックします。成功した点、改善点などを見つけることで、自己理解と価値観の形成を更に進めることができます。
これらを繰り返すことで、ゲームで得た知見を日常生活に活かし、自己成長を促進することが可能となります。
6. まとめ
本稿では、ゲームを通じて自己理解と価値観形成について深く探求しました。ゲームは、自己の反応や選択を視覚化し、価値観を確認・共有する有用なツールであることが明らかとなりました。具体的なゲームの例として「Wevox values card」、「エンゲージメントカード」、そして「価値観ゲーム」を紹介しました。これらのゲームは、自己理解の深化、他者理解とコミュニケーション能力の強化、さらには価値観の多様性への理解と包容性の育成に寄与することが確認されました。最後に、これらのゲームをどのように活用し、得られた自己理解と価値観を日常生活に活かすかについて提案しました。ゲームを介した自己理解と価値観の探求・形成は、個々の成長だけでなく、より良い社会環境の構築にも繋がります。